日時:2020年 6月 14日(日) 10:00〜12:00
場所:カウンセリングルーム沙羅
内容:第5章 家族介護は「自然」か 第5節 「家族介護」は福祉の含み資産か
▽ 読書会の概要:
参加者から、「上野千鶴子の新聞紙上の、介護に関する悩み相談をどう読むか」、という話題提供がありました。
▽問題提起となった、 上野千鶴子の悩み相談
<連載悩みのるつぼ> 介護がいる弟の死を望んでしまう 2020/6/13
●相談者 女性 40代
40代女性です。弟の死を望んでしまいます。
弟は周りの忠告も聞かず糖尿病を悪化させて視力を失い、透析に通っています。ほぼ寝たきりの状態を10年間世話をしていた母が要介護状態となり、近所に住む独身の姉である私が二人の家事、介護をしています。私は夕方からの勤務になりそれまで世話が続きます。
ヘルパーの利用や様々な社会的支援の助けがありますが、何よりストレスなのは、弟の言葉です。弟の下の世話や嘔吐(おうと)の処理、夜中の汚物の始末。ほんとに嫌です。嫌だけど、気持ち悪いけど、だからと言って片付けなかったことは一度もありません。睡眠を妨げられ、寝不足になって疲れて、私は不機嫌になります。「おはよう」と声を出す気にもなりません。弟への態度も冷たくなります。
そんな私を弟は「言葉がきつい、愛情がない、冷たい人間だ」といいます。私は冷たい人間でしょうか。そのたびに心で「死ね! 死んでしまえ」と思います。本当に手を出しそうになるのを必死に理性で抑えます。私の目は鬼のようにつり上がっていると思います。
行政に相談しろとか、ひとりで抱えないでとか、きれいごとの回答はしないでください。私が面倒を見るしかないのです。私はずっと、かつては仲のよかった弟に対し「死ね!」と思い続けるしかないのでしょうか。
○回答者 社会学者・上野千鶴子
やさしさはゆとりがないと生まれない
要介護の母と障害のある弟の多重介護。そりゃたいへんでしょう。こういう時には、結婚していないシングルの娘に介護要員が最優先に割り振られるのもよくある話。
「行政に相談しろとか、ひとりで抱えないでとか、きれい事の回答はしないで」と先手を打たれて、回答のハードルが上がりました。「私が面倒を見るしかないのです」とありますが、自ら選択肢を狭めることはありません。
「弟を世話していた母」が要介護になったせいで、ふたり分の介護が一挙に押し寄せたんですね。まず母の介護と弟の介助を切り分けましょう。あなたは母の介護をイヤだとは感じていらっしゃらないご様子ですね。イヤなのは弟の介助。イヤだと感じながらもイヤなお世話もやってしまう責任感の強さを感じます。
弟さんならあなたより若いはず。なのに不摂生から糖尿病由来の失明をしたことに、自己責任を問いたくなってしまう。弟とはいえ異性、その下の世話や汚物の処理をしなければならないのがつらい。
この若さで10年寝たきり、透析、失明の絶望の日々を送っておられる弟さんからは、周囲に当たる言葉も出ることでしょう。それを向けられたあなたからも、つい「きつい言葉」も出るでしょう。お察しもうしあげます。
それにしても「死ね」は埒(らち)の外。「目の前から消えてなくなれ」という気持ちの言い換えですね? それなら目の前から消えてもらいましょう。あなたがやるべきことは、母の介護と弟の介助を分離すること。そのためには弟さんに世帯分離をしてもらわなければなりません。
えー、そんなことできるか、って? 失明で透析治療中なら障害者手帳1級に該当しますから、障害年金を受け取れます。障害者総合支援法の対象となり、支援費のサービスを受けられます。介護保険のサービスよりずっと有利です。必要なら生活保護も受けてもらいましょう。
24時間介助の必要な重度の障害のある人も自立生活をしています。いずれ母亡き後は、弟さんは母抜きの生活を送らなければならないのですから、それがちょっと早く来るだけ、と思えば。
「かつては仲のよかった弟」と書くあなたには、不如意に陥った弟さんを不憫(ふびん)に思う気持ちもあるはずです。やさしさはゆとりがないと生まれません。距離を置けば、あなたにも、もともとあったやさしい気持ちが湧いてくるでしょう。
▽ 上野千鶴子の指摘
▽出された意見等
○人間、「寝ない」「食べない」とろくなことない
▽語句解説
・要介護度5の利用者で、利用料の月額上限36万円→2018年も36万650円
カウンセリングルーム 沙羅Sara
あなたはあなたのままで大丈夫。ひとりで悩みを抱え込まないで。
明けない夜はありません。
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