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沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム

沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム
日々の暮らしの中で、ちょっと気づいたこと、ほっと一息つけるようなことがらをコラムとしてまとめました。
あなたの「お役立ち」になるかどうか、心許ないですが、興味を持った「カテゴリー」から読んでみてくださいね。

カテゴリーごとに選べます。
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心理療法
2017/03/15
KSCC統合的心理療法セミナー(3)ー野末 武義 先生 ②ー  
野末武義先生の講義の続きです。

「3 相互作用システムの次元〜関係性を理解する〜」では、家族構成メンバーの関係を見る、次のような視点を提示されました。
    ・ 刺激と反応の連鎖、問題や葛藤をめぐる悪循環
    ・ コミュニケーション、境界、パワー
    ・ 堅固な相補性
    ・ couple dance (ex.追跡者と回避者のダンス Middelberg,2001/  怒る女性と引きこもる男性Simon,2012)

「カップルにおける相補性」とは、「感情と論理」の点において、妻は感情偏重で夫は論理偏重である場合が多く、これは「愛情飢餓の妻と冷淡な夫」という構図で説明されました。また「関係性と個別性」の点において、妻は関係性偏重で夫は個別性偏重である場合が多い。これら二つともバランスを取ることが求められるのに、いずれもどちらかに偏ることで、固定した二人の関係ができあがる。当人らは意識していないけれど、そういう二人の在り方で、双方の足らない部分を補い合っている、という意味で「相補性」と名付けられたのかなという理解を私はしました。しかし「相補」の意識は当人らにはなく、双方の「違い」(=違うこと)が問題とされていくのです。

次に、夫婦間の葛藤や緊張を回避するために、子どもなどの第三者を巻き込むことで表面的には安定する「三角関係(triangleが生まれるとの話になりました。この時の留意点として、次のことが挙げられていました。
    ・ 一般的に、母親が子どもと密着し、父親が疎遠になる
    ・ 巻き込まれた子どもに症状や問題行動が現れることがある
    ・ 母子関係のみに注目することの落とし穴

さて、その次に見られるのは「迂回連合(detouring coalition)」です。夫婦間の葛藤や緊張を否認し、子どもを問題とすることで表面的・一時的には夫婦は連合する、というのです。この時の問題として、次の点が挙げられました。
    ・ 子どもへの虐待、子どもの非行などの反社会的な問題
    ・ 子どもの問題解決、子どもとの分離に対する親側の不安と抵抗

う〜ん…、「子どもへの虐待、子どもの非行」が生じるのは、なんとなく理解できましたが、次の「問題解決することへの親側の不安」というのには、唸ってしまいました。…そうか、そうなんだ…。子どもの問題が解決してしまうと、今度は自分たちの問題に向き合わないといけなくなるから、限りなく不安になって抵抗するんだ…! この場合、「子は鎹(かすがい)」というより「子どもの問題は夫婦の鎹」ということですね。

「4 多世代家族システムの次元」では、まず「現在に生き続ける過去を理解する」視点として、次のことが挙げられました。
    ・ 世代を超えて伝達されるものは、個人内に内在化され、夫婦の・親子・他者との関係性に影響を及ぼし、次の世代に伝達される。
    ・ 源家族(夫婦それぞれの親との関係)・拡大家族の人間関係・葛藤や問題のパターン
    ・ 家族観・夫婦観・理想
    ・ (後述)破壊的権利付与・親役割代行
    ・原因・犯人を捜すのではなく、痛み・重荷・心理的遺産を共感的に理解し、負担を軽減する(世代間伝達・世代間連鎖から自由になる)

補足説明として、「世代間連鎖を断つ」ということも巷で言われるけれど、「断つ・切る」というのは、まだとらわれがある状態なので、「自由になる・とらわれなくなる」という方がいいということでした。「断つ」というのは「断たなければならない」と必要以上に、そのことを意識している結果の行動だからか…と私は理解しました。

「破壊的権利付与(destructive entitlement)」とは、源家族での体験として、家族とりわけ親から虐待や暖かい肯定的な関わりを受けることができなかった人(親の精神疾患・虐待やネグレクト・親の離婚や死別などはもちろん、もっと見えにくい小さな苦悩の積み重ねによることも)が、その後の人生でそうした苦労を誰かから理解され情緒的にサポートされなかった場合、次のようなことが見られるというのです。
    ・ 子どもやパートナーの欲求、感情、不安、考え方などに対する感受性や関心や配慮の欠如
    ・ 自分の言動が子どもやパートナーにどのような影響を及ぼしているのか、傷つけているのかについて自覚が乏しく、子どもやパートナーとの良好な関係を維持することの難しさ

この場合、そうならざるを得ない過去の体験が現在の否定的言動の根底にあることを理解し、過去の傷つきや痛みを受容し共感的に理解し応答することが必要であるとのことでした。

「親役割代行(parentification)」とは、家族の中で、子どもが(両)親に対して、きょうだいに対して、あたかも親であるかのような養育的な役割を取るような状況になること(短期的or長期的)で、物理的あるいは情緒的に親の面倒を見たり、親の夫婦関係に介入して葛藤を解決しようとする行動を指すようです。両親夫婦のストレスは拡散されますが、子どもが、結果的に自分自身の成長を犠牲にすることになるといいます。なぜなら、アイデンティティが混乱し、対人関係における孤立と融合を生むことになり、配偶者選択や夫婦関係・親子関係に影響するからだというのです。

「5 より大きな社会システムの次元」として、まず、社会的な文脈の理解が必要ということで、次のような視点が示されました。
    ・ 個人・夫婦・家族を取り巻くさまざまな社会システムや人間関係。ストレッサーにも資源にもなりうるもの。
    ・ 社会的経済的状況
    ・ 文化・差別や偏見
    ・ 職場システム・仕事(ex.夫の職場の特徴や子育て家庭に対する理解の程度、通勤時間も)
    ・ 地域社会・友人
    ・ マスメディア(映画・TV・インターネットetc.)
    ・ジェンダー(夫婦とは・仕事とは・浮気とはetc.)
    ・援助システム(専門家・非専門家)

さらに「ジェンダー:夫(父親)を理解し援助する難しさ」として次の6点。
    ・ うつ病の有病率は女性の方が高いが、自殺率は男性の方が高い:2005年の男女比は2.7対1(高橋,2006)
    ・ 男性は女性ほど自ら心理療法を求めない。(Gilbert & Scher,1999)
    ・ 男性は怒り以外の感情を隠蔽する。(中村,2000)
    ・一般的に心理療法では感情の表出が重視されるが,男性は女性ほど感情を表出しない傾向がある:標準的な男性の失感情症(Levant,1998)
    ・悩みを語ることや感情表現:男らしさへの脅威・恥の感覚(Wexler,2009)→妻・母親によって強化され悪循環に陥ることも
    ・ 男性は、セラピーの中で依存的な立場になることに抵抗を示したり、セラピストと競い合うことがある。(Worden & Worden,1998)

ここまでのまとめとして、次の4点。
    ・ 5つの次元は相互に関連し影響を及ぼし合っている。
    ・ どの次元に焦点を当てて介入するかは、心理療法の理論によって異なる。
    ・ どの次元に介入すると良いかは、ケースによって、また治療プロセスによって異なる。
    ・ ある次元に対する間接的な関わりが、他の次元に直接的な影響を及ぼすことがある。ex.子育てに関わらない多忙な夫
 
今日はここまで。次は「個人面接と夫婦・家族合同面接の比較」です。
画像は、広島市西区井口台のキッシュのお店です。



心理療法
2017/03/14
KSCC統合的心理療法セミナー(2)ー野末 武義 先生 ①ー  
関西カウンセリングセンター主催の「KSCC統合的心理療法セミナー」の午後の部は、明治学院大学心理学部の野末武義先生の講義でした。(野末先生はIPI統合的心理療法研究所にも関わっていらっしゃる方だということでした)「個人療法と夫婦・家族療法の統合」というテーマでお話しになり、「個人・夫婦・家族を理解するための5つの次元」を提示され、それぞれについて説明がありました。


「個人・夫婦・家族を理解するための5つの次元」

      1  客観化可能な事実の次元〜ライフサイクル(個人&家族)の視点〜
      2  個人システムの次元
            ①  一人ひとりを理解する
            ②  カップルにおける非合理的思い込み
      3  相互作用システムの次元〜関係性を理解する〜
      4  多世代家族システムの次元
            ①  現在に生き続ける過去を理解する
            ②  破壊的権利付与(destctive entitlement)
            ③  親役割代行(parentification)
      5  より大きな社会システムの次元
            ①  社会的な文脈の理解
            ②  ジェンダー:夫(父親)を理解し援助する難しさ

「1 客観化可能な事実の次元」とは、次のようなものです。
     ・ 個人の属性に関するもの(年齢・職業・教育歴・宗教など)
     ・ 結婚生活に関するもの(交際期間・結婚式・婚姻歴・子どもの有無・居住形態・離婚・再婚など)
     ・ 心身の健康状態(通院や入院など)
     ・ 何があったか(背景)、どのようなプロセスを経てきたか(発達と変化)、何を抱えてきたか、未解決か、今どのような状態か
     ・ 社会的機能(休職・頻回転職・未就職など)

それを、ライフサイクルから見ると、次の二つに分類できるというのです。
     ・ 状況的危機       …一部の家族しか経験しない、予測不可能な危機(家族の急死・事故・失業・災害など)
     ・ 発達課題的危機 …ライフサイクルの移行に伴って平均的な家族が体験する危機で、ある程度予測可能。個人のライフサイクル(エリクソン)+家族のライフサイクル(中釜他,2008)の2つの視点から見る

「2  個人システムの次元」では、まず個々人に対して、次のようなことを理解する必要性が説明されました。
    ・ パーソナリティスタイル(強迫性・演技性etc)
    ・ 感情・認知・不安
    ・ 自尊心・自己愛・防御機制・アタッチメントスタイル
    ・ 症状・問題・葛藤に対する認識の仕方
    ・ セラピー(セラピスト)に対するイメージ・動機づけ・期待・抵抗
    ・ 夫婦・親子・家族に対する価値観・思い込み
    ・ 親密さへの恐怖
 
ここで私は「親密さへの恐怖」に、少し? と思ったのですが、確か、生育過程における親との関係で、何か解決されていない問題を抱えていた場合、親密になることに対して無意識に恐怖を感じて、避ける行動を取ってしまう、というような補足説明がされたと思います。
「アタッチメントスタイル」は、エインズワース(Ainsworth)らの研究で、子どもと養育者の一時的な分離と再開というストレンジ・シチュエーション法による観察により、 乳児の アタッチメント・パターンを「安定型」「不安(アンビバレント)型」「回避型」の3つに分類したものです。親との親密度で乳児の反応パターンが変わるとされています。ここでは、それが成長後にどのような影響を及ぼしているかを取り上げているのだと私は理解しました。

「カップルにおける非合理的思い込み」とは、たとえば次のようなものです。
  ・ 結婚は人を孤独から解放してくれる
  ・ パートナーが自分のことを本当に愛しているのなら、気持ちや考えは言わなくても分かってくれるはずだ
  ・ パートナーとの間で葛藤はなるべく避けた方が良い
  ・ 夫婦であれば、言いたいことは何でも言うべきだ
  ・ 子育てについて夫婦で意見が食い違ったとき、どちらかが間違っている
  ・ 夫婦の関係が良いものになるためには、相手が変わらなければならない
  ・ パートナーが頼りにならないとき、子どもや実家の親に頼るのは当然だ

こういったことを頑なに思っていると「問題」になってくるというのです。「違うこと」が問題なのでなく、「違うことをどのように夫婦で共有できていくかが大切」と野末先生はおっしゃいました。なお、「察してくれて然るべき」というのは、何も日本文化特有のものではなく、カップルセラピーが生まれたアメリカにもあるとのことです。そこでも、「お互いの弱い(=悲しみ、怒り)感情を、どう上手く表現して受け入れられるか」が扱われている、とのことでした。

まとめ始めると長くなってきたので、一旦、ここで置きます。続きは、明日。(東豊先生のが長くなり過ぎた反省を踏まえて。)

画像は、3月11日にお誕生日を迎えた広島の友人に送った、プリザーブドフラワー。震災以降、お誕生日が素直に祝えなくなってしまった、と悲しんでいたので。(震災以前に生まれているものね、それはそれ、とお祝いに。)



心理療法
2017/03/13
KSCC統合的心理療法セミナー(1)ー東豊先生ー  
昨日は関西カウンセリングセンター主催の「KSCC統合的心理療法セミナー」に参加しました。全6回で構成されたセミナーの、最後の回ということでした。テーマは「統合的心理療法とシステムズアプローチ」で、家族療法家の二人の先生からの、それぞれ1時間半の講義の後、「W講師によるケーススーパービジョン」が行われました。

まず午前の部は、「会話で新しい現実を作るーシステムズアプローチ、家族療法、ブリーフセラピー」と題された、龍谷大学文学部教授の東豊先生の講義でした。今回の講義は、システムズアプローチの観点から
   ※「問題」とは何か
   ※ 効果的な援助とは何か
   ※ 効果的なコミュニケーションの方法とはどのようなものか
を明らかにする、という目的が明示されました。

東先生がシステムズアプローチの原理原則として示されたのは「『現実』は会話(相互作用)によって作られる。言い換えれば、作り変えることができる」ということです。私たちの身の回りにある「真実・現実」とは、人々があるものを「認識し(=注目し)」「思考し(=意味付けし)」「言葉にする(=コミュニケーションする・行動する)」というプロセスを経て、あたかもそれが「真実・現実」であるかのように構築されたものにすぎない、という社会構成主義の立場を取っているのです、と説明されました。それが、システムズアプローチの「哲学」だと。

そういう視点に立つと、「◯◯が原因である」、「◯◯が問題である」などといった現実もすべて当事者たちによって構成されたものである。それには、時代や文化の影響も大きい、というのです。ですから、
   1  何が当事者に注目され
   2  どのように意味付けされ
   3  どのようなコミュニケーション(行動)によって増幅されているか
を見ていくことで、親子、夫婦といった家族のシステムを硬直させているものが明らかにできる、というのです。

ここで、私にはゲシュタルト療法でおなじみの「図と地の反転の絵」が示されました。「どこに着目するかによって見えてくるものが異なる絵」です。これを提示しながら、東先生は「全部与えられている、全員、平等に。」という言い方をされました。与えられたもののうち、見る者・物によって全て(=現実)は変わる。それは、意味づけるものが違うからだと。

以上のことから、援助的関わりとは、会話によって当事者の「現実」を再構築(=脱構築)すること。これを治療的会話と言うのだそうです。ただし、この治療的会話とによって生み出される、新しい「現実」は、「希望」「安心」等につながるものであることが必要だと言われました。それは心理療法として当然のことですね。

現実の再構成(=脱構築)のために必要な技術とは、「ジョイニング」と「リフレーミング」。

Joining(ジョイニング)とは、相手に溶け込むこと、合わせること、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまりは、相手の、既存の「構成された現実の」や「コミュニケーションのルール」を受け入れること。それには、技術よりも心構えが重要で、治療者側が「問題」を作らないこと。「Positive Connotation(ポジティブ・コノテーション)を持つこと、つまり、「常に相手を肯定的に見ること」が必要だというのです。

クライエントの価値観がどうしても受け入れられず、ジョイニングが困難な場合は、他の人にリファーすることが必要、と言われました。 どんな人でも万能ではなく苦手とするクライエントのタイプもある、そこを無理しないで手放すこと、それは恥ずかしいことでもなんでもない、と言われました。
確かに、自己一致してそこに存在することがセラピストの存在意義であるなら、手放すことがお互いのためなのだと素直に受け止められました。

Reframing(リフレーミング)とは、相手の枠組みを変えるための働きかけ、相手の「現実構成」を変える試み、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまり、相手の注目点を変えてみることで意味を変え、「問題」をシフトしたり「原因」をシフトしたりすること。

実際の治療的会話は、ジョイニングとリフレーミングを行ったり来たりしながら、少しずつ「新しい現実(=新しい物語)」を作っていく、というセラピストとクライエントの共同作業であり、合意形成のプロセスである、と。

この後は、20分間の模擬面談のVTRを視聴し、夫婦で来られたクライエントに対して、どのような関わりが展開されていったかを見ました。これまで個人カウンセリングは経験あるけれど、複数人のカウンセリングは初めて、というカウンセラーさんがチャレンジされたものでした。どの辺りで行き詰まりに入っていったかを、途中、一時停止しながら検証しました。

設定は、子どもが就職して夫婦二人になって、今後何年かのちの夫の定年を見据えて、妻が働きに出たいというのを夫が拒んで、家庭内は険悪なので、なんとかしたいという妻の主訴でした。

このVTRで興味深かったのは、カウンセラー側の「気持ち」がカウンセリングに多大な影響を与えるということ。実際に後でカウンセラー役をされた方に聞いたら、夫に対して最初から「ああ、嫌なオヤジ、奥さんかわいそう」という感情を持ったそうなのです。そうすると、「夫婦二人がもめている」のではなく、「三人がもめている」、もっと言うと、「カウンセラーがこの二人をもめさせている」と見るべきなのだと。それはカウンセラーが「問題を作っている」のだと言うのです。「ああ、嫌なオヤジ」と思うから、問題が現象化してくる、と。だから、カウンセラーは、常に自分をモニタリングする必要があると。これが、最初に話された「治療者側が問題を作らない」ということの事例だったのです。

今回のケースでは、ケンカをさせない、ケンカになりそうになったら、どうブロックするかが課題だった、と言われました。それは、リフレーミングの邪魔になるから、だそうです。このケースでは、「理解のない夫」から「変化に弱い夫」にリフレーミングし、それを二人が納得すること。「変化に弱い夫」という見方を妻が共有してくれるか、という点に落とし込んでいく、と言われました。

VTRでは引き続き、20分で東先生がカウンセラーをして見せてくださるカウンセリングとなりました。
その際、夫婦二人を前にして「確認しておきたいのですが、離婚を考えていらっしゃる、ということはないですね? カウンセリングの目的は、お二人の関係をいいものにしていくこと、それでよろしいですね?」という確認をされていたのも印象的でした。このカウンセリングは、何のために行うのか、もちろん当初の目的と異なってくることもあるかもしれませんが、クライエント双方にとって合意できる地点をこのように確認しておくことは、嫌々ながら連れられてきた側のクライエントが、中断することにならない手立てとみました。

そのVTR視聴後に、今後の留意点として、「今回作った枠組みを絶対崩さないこと」を言われました。リフレーミングには必ず「揺り戻し」が来るけれど、決してそれに乗ってはいけない、今回作った「変化に弱い夫」を双方が受け入れながら、双方が自分らしく羽ばたいていけるように支援すること。

いやあ…ホント目から鱗、でした。VTRで、カウンセラー役が夫とのやりとりが行き詰まってきて、チラッと妻の方を見るのですが、先生は、「ほら、気づきましたか? カウンセラーが妻にアイコンタクトを送りましたね? それで妻の夫に対する攻撃がまた始まりましたね?」と、カウンセラーの何気ない(あるいは無意識の)行動が何を引き起こしたか、ということを見る視点もいただきました。指摘されないと気づきませんでした。

また、今回のケースでは、カウンセラーの価値観は別にあったとしても、カウンセリングの流れとして必要ならば、夫の価値観に同意してみせる(「我々の年代のような男にはありがちですよね」というような、夫に寄り添った発言)こともする、と言われました。個人カウンセリングの在り方からいえば、「誠実」でないという意味で、とんでもないことかもしれないですけど、と。

ですが、私はその後少し個人的にお話しに行って、「自己一致、を何に対してするか、という問題だと思うのですが、私は先生はシステムズアプローチを成立させるということを何よりも大切にされていて、それに対して自己一致されているんだと思います」と申し上げたら、「そういう理解の仕方は私にはなかったから、とても嬉しい」とおっしゃいました。

濃密な1時間半でした。

画像は、その後ランチを取った、会場近くの喫茶店です。


心理療法
2017/02/28
京都文教コラージュ療法研究会(2)  
一昨日の続きです。午後からはスクールカウンセラーをされている方の「言語でのコミュニケーションが難しい女子との面談ーコラージュを取り入れてー」というタイトルでの研究発表でした。「言語でのコミュニケーションが難しい小学生高学年の子どもとの面接にコラージュを取り入れることで進展が見られた。事例経過についてコラージュ作品をもとに検討したい」というのが、この研究発表の目的として提示されていました。

事例として、ひとりの女子生徒の小学校高学年から中学校2年現在までの4年間の詳細なやりとりの記録が出されました(研究発表後回収)。コラージュに至るまでの取り組みの中で、「スクイグル」「風景構成法」があって、「スクイグル」というのが私には聞きなれない用語だったので、発表を聞きながら急いでタブレットで調べました。

スクイグル(squiggle)ドナルド・ウィニコットが提唱した、治療者とクライエントとが交互になぐり描きをして、見えたものを絵にする技法。なぐり描きと描画をクライエントひとりで行うスクリブル法(scribble)もある。

と出ていました。ふうーん、そんなものがあるのかと聴いていましたら、森谷寛之先生のコメントは「スクイグルを日本に導入するときに、きちんとウィニコットの意図も含めて導入できていない点がある。治療者とクライエントとが交互になぐり描きをするといっても、治療者は思いつくままになぐり描きをするわけでなく、治療者側はクライエントの意図を読み取って、それに沿う方向でなぐり描きをしてみせるわけで、そういった高度な分析を必要とする、難しい手法なんです。」とのこと。

形、形式はすぐに取り入れられても、その手法を考案した人の、本来の意図まで含めて導入できているかどうか、というのは大切なポイントだと思います。

中学生になったクライエントのコラージュに、モデルのような綺麗な女性の顔を切り抜いたものから、目や口をくり抜き、ちょっと不気味なお面のようなものが出てきました。自画像、というかこれから先の、目指す自己像が描けなくて混乱している様子がうかがえました。その他、魅力的な女性の全身像もコラージュに登場しました。森谷先生のコメントは「コラージュは、クライエントが思春期に入ったかどうかの判定に敏感である」とのことでした。

既成の写真を切り抜いて好きに貼るだけのコラージュですが、本当に、何をどう選ぶかで、その時のその人の精神状態が如実に出てしまいます。一枚の画用紙という空間を構成するのに、絵で上手く表現できない人でも自分の世界を表現することができるという点で、非常に優れた表現法だと思います。表現するだけでも、本人の気づきが生まれることもあるでしょう。コラージュ療法は、そういったコラージュを入り口にして治療に応用できる点で優れた療法だと思います。

研究会には初めて参加したのですが、コラージュ療法のことだけでなく、多くのことを考えさせられる機会となりました。



心理療法
2017/02/27
京都文教コラージュ療法研究会(1)  
昨日は第72回京都文教コラージュ療法研究会に参加するため、京都駅前の「キャンパスプラザ京都」まで出向きました。
午前中は、京都ノートルダム女子大学・佐藤睦子さんの「コラージュ実習とガン患者さんイベントにおけるコラージュについて」というタイトルで実習と報告がありました。

久しぶりに2度目のコラージュに挑戦! コラージュ用に旅行社のパンフレットなども持参していたので、それらをパラパラ見ていると、屋久島の屋久杉を前にして、背を見せ、手を広げて立っている人の写真が目に入り、それを中心に他の「部品」を選んでいくことにしました。

桜と富士山、渓谷、雪山などの自然だけでなく、人工の夜景や花火、昼だけでなく夜の星、夕方など、季節も時間帯もさまざまに配置して、タイトルを「選択の自由」としました。
31年の勤め人生活では、制約が多すぎて、自分を活かすことが難しかった、という気がして、どうも「枠からはみ出る」ことをしたくて、今回も画用紙からはみ出して貼り付けました。
最初は素直にまっすぐ貼っていたのですが、出来上がりを確認するときに、ちょっと斜めに貼り直したくなりました。

中心の屋久杉を前に手を広げている人間が私ですが、その斜め横にイルカが2頭飛び跳ねさせ、好奇心に弾む心を表現しました。

1時間の制作時間の後、参加者の発表タイムとなり、教示されたように「制作にあたって、自慢できるところ」を加えながら発表しました。

続き
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