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KSCC統合的心理療法セミナー(1)ー東豊先生ー

2017/03/13
KSCC統合的心理療法セミナー(1)ー東豊先生ー
昨日は関西カウンセリングセンター主催の「KSCC統合的心理療法セミナー」に参加しました。全6回で構成されたセミナーの、最後の回ということでした。テーマは「統合的心理療法とシステムズアプローチ」で、家族療法家の二人の先生からの、それぞれ1時間半の講義の後、「W講師によるケーススーパービジョン」が行われました。

まず午前の部は、「会話で新しい現実を作るーシステムズアプローチ、家族療法、ブリーフセラピー」と題された、龍谷大学文学部教授の東豊先生の講義でした。今回の講義は、システムズアプローチの観点から
   ※「問題」とは何か
   ※ 効果的な援助とは何か
   ※ 効果的なコミュニケーションの方法とはどのようなものか
を明らかにする、という目的が明示されました。

東先生がシステムズアプローチの原理原則として示されたのは「『現実』は会話(相互作用)によって作られる。言い換えれば、作り変えることができる」ということです。私たちの身の回りにある「真実・現実」とは、人々があるものを「認識し(=注目し)」「思考し(=意味付けし)」「言葉にする(=コミュニケーションする・行動する)」というプロセスを経て、あたかもそれが「真実・現実」であるかのように構築されたものにすぎない、という社会構成主義の立場を取っているのです、と説明されました。それが、システムズアプローチの「哲学」だと。

そういう視点に立つと、「◯◯が原因である」、「◯◯が問題である」などといった現実もすべて当事者たちによって構成されたものである。それには、時代や文化の影響も大きい、というのです。ですから、
   1  何が当事者に注目され
   2  どのように意味付けされ
   3  どのようなコミュニケーション(行動)によって増幅されているか
を見ていくことで、親子、夫婦といった家族のシステムを硬直させているものが明らかにできる、というのです。

ここで、私にはゲシュタルト療法でおなじみの「図と地の反転の絵」が示されました。「どこに着目するかによって見えてくるものが異なる絵」です。これを提示しながら、東先生は「全部与えられている、全員、平等に。」という言い方をされました。与えられたもののうち、見る者・物によって全て(=現実)は変わる。それは、意味づけるものが違うからだと。

以上のことから、援助的関わりとは、会話によって当事者の「現実」を再構築(=脱構築)すること。これを治療的会話と言うのだそうです。ただし、この治療的会話とによって生み出される、新しい「現実」は、「希望」「安心」等につながるものであることが必要だと言われました。それは心理療法として当然のことですね。

現実の再構成(=脱構築)のために必要な技術とは、「ジョイニング」と「リフレーミング」。

Joining(ジョイニング)とは、相手に溶け込むこと、合わせること、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまりは、相手の、既存の「構成された現実の」や「コミュニケーションのルール」を受け入れること。それには、技術よりも心構えが重要で、治療者側が「問題」を作らないこと。「Positive Connotation(ポジティブ・コノテーション)を持つこと、つまり、「常に相手を肯定的に見ること」が必要だというのです。

クライエントの価値観がどうしても受け入れられず、ジョイニングが困難な場合は、他の人にリファーすることが必要、と言われました。 どんな人でも万能ではなく苦手とするクライエントのタイプもある、そこを無理しないで手放すこと、それは恥ずかしいことでもなんでもない、と言われました。
確かに、自己一致してそこに存在することがセラピストの存在意義であるなら、手放すことがお互いのためなのだと素直に受け止められました。

Reframing(リフレーミング)とは、相手の枠組みを変えるための働きかけ、相手の「現実構成」を変える試み、その相互作用のプロセスを指す、とのこと。つまり、相手の注目点を変えてみることで意味を変え、「問題」をシフトしたり「原因」をシフトしたりすること。

実際の治療的会話は、ジョイニングとリフレーミングを行ったり来たりしながら、少しずつ「新しい現実(=新しい物語)」を作っていく、というセラピストとクライエントの共同作業であり、合意形成のプロセスである、と。

この後は、20分間の模擬面談のVTRを視聴し、夫婦で来られたクライエントに対して、どのような関わりが展開されていったかを見ました。これまで個人カウンセリングは経験あるけれど、複数人のカウンセリングは初めて、というカウンセラーさんがチャレンジされたものでした。どの辺りで行き詰まりに入っていったかを、途中、一時停止しながら検証しました。

設定は、子どもが就職して夫婦二人になって、今後何年かのちの夫の定年を見据えて、妻が働きに出たいというのを夫が拒んで、家庭内は険悪なので、なんとかしたいという妻の主訴でした。

このVTRで興味深かったのは、カウンセラー側の「気持ち」がカウンセリングに多大な影響を与えるということ。実際に後でカウンセラー役をされた方に聞いたら、夫に対して最初から「ああ、嫌なオヤジ、奥さんかわいそう」という感情を持ったそうなのです。そうすると、「夫婦二人がもめている」のではなく、「三人がもめている」、もっと言うと、「カウンセラーがこの二人をもめさせている」と見るべきなのだと。それはカウンセラーが「問題を作っている」のだと言うのです。「ああ、嫌なオヤジ」と思うから、問題が現象化してくる、と。だから、カウンセラーは、常に自分をモニタリングする必要があると。これが、最初に話された「治療者側が問題を作らない」ということの事例だったのです。

今回のケースでは、ケンカをさせない、ケンカになりそうになったら、どうブロックするかが課題だった、と言われました。それは、リフレーミングの邪魔になるから、だそうです。このケースでは、「理解のない夫」から「変化に弱い夫」にリフレーミングし、それを二人が納得すること。「変化に弱い夫」という見方を妻が共有してくれるか、という点に落とし込んでいく、と言われました。

VTRでは引き続き、20分で東先生がカウンセラーをして見せてくださるカウンセリングとなりました。
その際、夫婦二人を前にして「確認しておきたいのですが、離婚を考えていらっしゃる、ということはないですね? カウンセリングの目的は、お二人の関係をいいものにしていくこと、それでよろしいですね?」という確認をされていたのも印象的でした。このカウンセリングは、何のために行うのか、もちろん当初の目的と異なってくることもあるかもしれませんが、クライエント双方にとって合意できる地点をこのように確認しておくことは、嫌々ながら連れられてきた側のクライエントが、中断することにならない手立てとみました。

そのVTR視聴後に、今後の留意点として、「今回作った枠組みを絶対崩さないこと」を言われました。リフレーミングには必ず「揺り戻し」が来るけれど、決してそれに乗ってはいけない、今回作った「変化に弱い夫」を双方が受け入れながら、双方が自分らしく羽ばたいていけるように支援すること。

いやあ…ホント目から鱗、でした。VTRで、カウンセラー役が夫とのやりとりが行き詰まってきて、チラッと妻の方を見るのですが、先生は、「ほら、気づきましたか? カウンセラーが妻にアイコンタクトを送りましたね? それで妻の夫に対する攻撃がまた始まりましたね?」と、カウンセラーの何気ない(あるいは無意識の)行動が何を引き起こしたか、ということを見る視点もいただきました。指摘されないと気づきませんでした。

また、今回のケースでは、カウンセラーの価値観は別にあったとしても、カウンセリングの流れとして必要ならば、夫の価値観に同意してみせる(「我々の年代のような男にはありがちですよね」というような、夫に寄り添った発言)こともする、と言われました。個人カウンセリングの在り方からいえば、「誠実」でないという意味で、とんでもないことかもしれないですけど、と。

ですが、私はその後少し個人的にお話しに行って、「自己一致、を何に対してするか、という問題だと思うのですが、私は先生はシステムズアプローチを成立させるということを何よりも大切にされていて、それに対して自己一致されているんだと思います」と申し上げたら、「そういう理解の仕方は私にはなかったから、とても嬉しい」とおっしゃいました。

濃密な1時間半でした。

画像は、その後ランチを取った、会場近くの喫茶店です。

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