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沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム

沙羅 Sara の「ほっと一息」コラム
日々の暮らしの中で、ちょっと気づいたこと、ほっと一息つけるようなことがらをコラムとしてまとめました。
あなたの「お役立ち」になるかどうか、心許ないですが、興味を持った「カテゴリー」から読んでみてくださいね。

カテゴリーごとに選べます。
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心理療法
2017/06/28
2017年度 第1回  KSCC統合的心理療法セミナー「発達障害の統合的心理療法」(3)W講師によるケーススーパービジョン  
講義が終わって最後は、事例報告、それに対して講師お二人からのコメントをいただく、という「W講師によるケーススーパービジョン」となりました。
今回は「自己コントロールに困難さを抱えるASD(自閉症スペクトラム)児への行動支援」というタイトルで、病院にお勤めの臨床心理士の報告がされました。

対象児Aは当時小学4年生。支援学級在籍ですが、国語と算数のみ支援学級に抽出しての指導で、他の時間はクラス児童と一緒に授業を受ける、という状態。

病院に来られた時の相談内容は、「弟の行動態度が自分の意に沿わないと過剰に反応し乱暴するので、その低減を図りたい」ということと、「2年生の頃から『死にたい』『生まれて来なければよかった』とネガティブな発言が増え、自分への失望感や罪責感を募らせているので、その苦悩を和らげたい」ということ。

家族の状況は、父、母、A、弟(年中)の4人家族。共働き。
父は何かにつけ、Aを注意しがちで、Aは反発。
父の親族には障害特性に対する理解を得られにくく、「母親だからなんとかしろ」としつけを責めるような態度を示されるため、母は家族内外で針のむしろ。

対応経過は、1〜2ヶ月に1回(50分)の母親面談。A本人は、医療に対する強い不信感から一度も来院せず。
事例報告は、小学校4年5月から5年6月までの10回の母親面談でのこと。

発表者は、まず、母に、Aの行動を「環境との相互作用」という枠組みから捉え直す視点の有用性を伝えた。
次に、「問題の行動が起こった時刻(場面状況)を毎日記録することを依頼し、Aの問題行動の生起状況を洗い出した。
そして、(園児である)「弟に対する行動支援の枠組み」を作って、Aの弟との「衝突」を回避する取り組みを行った。

「弟に対する行動支援の枠組み」とはAがイライラした様相を見せる時には不用意に近づかず、別の部屋で過ごすように、母が弟に合図を送る、Aに対する要求や困り感がある時は、まず母に伝えるようにする、など。

弟が望ましい行動(母に解決を委ねる、Aを無視して相手にしない)が取れた時には、母から「GoodJob!」のサインやポイントカード(トークンシステム)が貰えるなどの「楽しみな活動」が貰えるようにし、対応を工夫しても望ましくない行動が起こってしまった時には、母が2人を引き離す等の手立てを講じての取り組み手順を決めた。

Aと弟の衝突が減り、Aに母や弟の努力を認める発言が現れ、A自身も自分の頑張りを認める発言が出だし…と、とてもいい流れが生まれたなあと感心して聞かせていただいていたのですが、村瀬嘉代子先生のコメントで、あ、と思いました。

先生は、Aが一度も、来院してこの報告者に会っていない点を重視されて、「自分の在り方に重大な相談がされている場に本人がいないというのはどうなのか」「本人が自分のことで相談されて、その取り組み計画に関わっていないというのは、操作。」「小学校4年なら、もう自分の在り方を考えられる年齢」「操作されることによって変えられるのは疑問」と言われたのです。

先生は続けて、「来院しないのなら、この子にわかるような言葉で、手紙を送る方法もある。小学3年生でも可能では?」と言われました。

つまりは、「人の自尊心をどう傷つけないでやっていけるか」「本人の主体性をどう育てていくか」を問題にされたのです。
…ショックでした。私は、主体性の育成や自尊心の尊重を考えてきたはずなのに、どこか、小学生なら、ましてや発達障害を抱えているなら、仕方ないか、と思ったのだと思います。
幼いなら幼いなりの、そして障害を抱えていても、それに対する「手立て」を講じる必要はあるかもしれませんが、最初から「難しいだろう」「無理だろう」と決めつけて「自尊心」や「主体性」を育む視点を持たないでいることは不遜なこと。
本当に…、とてもショックを受けました。

でもまあ、報告者の報告は途中経過だったので、これから、A本人とどう関わっていくかの視点とされる旨の発言がされました。
会が終わって、報告者にとてもいいご報告でしたと労い、「これからの、本人との直接的な関わりは、この実践に足していかれたらいいことですよね?」と申し上げました。報告者も、「そうです。そう考えています」と言われました。

本当にとても有意義な時間でした。

画像は2日前の、朝の杏樹との散歩で見かけたご近所の薔薇。雨上がりで、ちょっと雨の雫が素敵でした。

心理療法
2017/06/27
2017年度 第1回  KSCC統合的心理療法セミナー「発達障害の統合的心理療法」(2)村瀬嘉代子先生  
加藤敏先生の講義のあと昼休憩となり、午後からは村瀬嘉代子先生の講義となりました。
村瀬先生は、大正大学大学院にお勤めで、今年3月まで、日本臨床心理士会の理事長をされていた方です。
昨年度のKSCC統合的心理療法セミナーでも講義されたことを思い出し、1年の時間経過の速さをふと感じました。

村瀬先生の講義で印象的だったところを列挙してみます。

発達障害とは、人間の一生にわたって身体・知・こころの面に現れてくる成長・変容の過程において、何かしらの「負の様相」が人生の早期に現れ、それが一過性なく、その後の成長・変容に何らかの影響を持続的に与えている状態。
障害と呼ばれる様相は、生物学的脆弱性と、心理療法・社会・文化的要因が輻輳して関与している。
援助の視点はそれらの様相の全体像を捉えつつ援助過程の状況に応じて、焦点化をも併せ行うこと。

臨床においては「一人称」、「二人称」、「三人称」(=対象化して捉え直す視点)の視点を併せ持つ上での理解と対応を元に、身を添わせることが望ましいのではないか→セラピストのバランス感覚

援助とは基本原則を踏まえながら、個別的で多面的なアプローチをすること。
綿密に気づき、観察し、考え抜き、工夫すること。
 
発達的視点からの理解として、問題行動はその子なりの適応しようとする営みである。
発達障害児を理解するということは、人の発達がどのように生物学的、心理的、社会的要因によって影響を受けているかを解明すること。
「問題」と言われる行動にも、複数の経路や経過がある。

支援者に問われることは、自分自身の障害観、人生観。
「ある条件を受け止めて、限定される枠を模索努力しつつ、広げていく生」

家族やその他周囲の環境に対して、共同援助者という立場で(咎め、糺す眼差しではなく、ささやかでも分かちあう)、上下関係ではなく、一緒に。
困難に遭遇することで、家族関係の瑕疵(かし=不十分な点 ※引用者注)が表面化し、それが療育過程に陰を落とすこともあり得る。家族関係の維持・向上を念頭にそっと置く。

家族とは双方向性を持って、親の希望に添いながら情報を共有して進める。
きょうだい、近隣との関係への配慮、きょうだいにも配慮を。
療育場面やセラピーの場面と日常生活の連続性を考える。
訓練という色彩に終始しない。楽しさ、歓び、ユーモアの感覚をどう見出すか。
身体的ケアと心理的ケアのバランス

「ある条件を受け止めて、限定される枠を模索努力しつつ、広げていく生」と打っていて、それは、障害の有無に関わらず、誰もがそうなのではないか、と思えてきました。

私は「長女」として親から要求されることが嫌で、ずっと避けてきた。
避けて四半世紀を生きて、自分の人生を振り返ってみた時に、さほど「幸せ」ではないことに気づいた。
ならば、それを引き受けた時に、自分の人生はどう展開するのだろう? と思った。
それはある意味「ある条件を受け止めて、限定される枠」を受け入れたことではないのか? と思うのです。
そして、その枠を「模索努力しつつ、広げていこう」として、「カウンセリングルーム」を開き…という今があるのではないか…?

とすると、障害を持つ人と私とは対岸にいるのではなく、「生きづらさ」「息苦しさ」の点において、共感できる素地がある、と思うのです。
…まあ、そもそも強度の近視なので、そういった意味でコンタクトレンズやメガネなしには生活が全く成り立たず、自分の状況に合わせて「工夫」しながら生きているという点で共通項を感じてきたのですが。

できることを、できる時に。無理なく。
そう思います。

さて、村瀬先生が言われたことで、一番印象的だったのが「関係というのは、会った瞬間から、別れる時まで。カウンセラーがアセスメント(査定)をすると同様、クライエントもカウンセラーのアセスメントをしている。関係は双方向的。」

それはそうですね。クライエントは必死になって「この人に話して大丈夫だろうか? 傷つけられないだろうか?」とカウンセラーの人となりを探る作業をしている、と思います。

その後、事例として「ある少女が生きる喜びを見出すまで」をお話くださったのですが、出会いから40年を経た、その関わりは圧巻でした。予定時間を遙かに超えて、でも、先生のお話に聞き入りました。
支援とは本当に、共に生きること、と痛く感じました。
私もそういう支援をしたいと願います。

そうそう、先生はかなり高齢でいらっしゃるとお見受けしたのですが、なんと82歳でいらっしゃいました。

画像は朝の杏樹(アンジー)との散歩で見つけたご近所の赤いお花。見かけない花でしたが、ちょっと可愛い。

心理療法
2017/06/26
2017年度 第1回  KSCC統合的心理療法セミナー 「発達障害の統合的心理療法(1)加藤敏 先生  
昨日は関西カウンセリングセンター主催の、「2017年度 第1回 KSCC統合的心理療法セミナー」に参加しました。
全6回ですが、各回、2名の講師によるそれぞれ1時間45分の講義、事例報告とそれに対する2人の講師による検討が2時間、というメニューです。

第1回は「発達障害の統合的心理療法」というテーマでした。
午前の最初の講義は、加藤敏先生(こども心身医療研究所・主任臨床心理士)。
「発達障害の心理支援における統合的アプローチのあり方」という題名でお話いただきました。

こども心身医療研究所・親と子の診察所の簡単なご紹介があり、「幼児から成人までの範囲で、心因性疾患、発達障害、不登校などに対して主に心理治療、薬物療法を中心に行う医療機関」だそうです。
診療活動を始めてから、今年で31年目に入るとも。
外来治療が中心で、小児科、心療内科、児童精神科を標榜されているそうです。

調べましたら、大阪市西区土佐堀にあるようです。

ご自身の、今から考えると発達障害だったのではないかとお考えになっている、生い立ちの披露からお話を始められました。

どのように「状況理解」が悪かったのか、ひとつの事例のように理解することができました。


ご自身の、学生時代からこれまでに学んで来られた3つの理論(ロジャーズのクライエント中心療法・精神分析的理解+ユング派教育分析・認知行動的介入)をお話しになり、つまりは、それらが現在の「統合的心理療法」にどう関係するか、という流れであったように思います。

印象に残ったのは、3つあって、ひとつは「理論統合」と「理論複合」の違いです。

「理論統合」とは、ある病気や病理に対する心理学的見解を中心にして様々な理論を合成していくもの、ひとつの自己理論を構成するために既存の多くの理論を合成してひとつの理論体系を作ろうとするもので、一元的な姿勢になりやすい、というのです。
それに対して「理論複合」は、患者の悩み、問題などを解決するために、多くの理論や技法をカスタマイズして使用する姿勢で、理論を多元的に使用する認識や態度の在り方を明確にするもので、多元的な姿勢を保ちやすい、こちらの立場に自分は立つ、と。

印象に残った2つ目は、「問題の外在化」というひとつの認識論的方略で考える、ということ。
まあ、カウンセリングは、クライエントが訴える「問題」を仲立ちにして、その問題を共有して解決するように取り組んでいく流れであるのですが、私が興味深かったのは「何が不安なのか、をクライエントが明らかにしようとすることで、『不安』の認識が変化する」と言われたことです。

つまり、漠然とした不安を言語化する流れの中で、「不安に対してキョリが取れる」のだと。
これを、「問題の外在化による距離化」と呼ばれていました。

印象に残った3つ目は、「脳の疲労」という言葉です。
何か問題があるとき、外的要因としての「環境のアセスメント」と内的要因としての「発達をみるアセスメント」が必要だけれど、それがどのように作用して問題を引き起こしているのか、すぐさまはわからない。
それより、現象として「脳の疲労」が起こって、症状や問題行動を引き起こしているのだから、まずは「脳」を休めることを行うべきではないか、という見方。
緊張状態を和らげ、心を落ち着かせ、という関わりの必要性を言われているのだと思います。

分析は必要。ですが「緊急事態」に必要なことは、分析から導かれる対応ではなく、緊張状態を解き、心を落ち着かせること。
まあ、あたりまえと言われるとそうですが。
逆に、「あたりまえ」な対応をすべき、ということかと。

今回、新たに知ったのは「パニックや怒りの爆発にはピーク点があり、ピーク点の手前で落ち着かせようとしても、なかなか怒りは収まらないし、逆に長引く」ということ。
これも言われてみるとそうだなあと思うのですが、「怒り」に対して良くないものという見方をしていると、とにかく「やめさせないと」に走りがちでしょうね。
始まったら、一定時間エネルギーを放出させる方がいいのでしょう。

薬物療法に対しては「保護者に対して、なぜ薬物療法を勧めるのかというきちんとした説明は必要だけれど、基本的に、嫌がっている保護者には勧めない」とのご説明があったので、「どういったときに薬物療法をお勧めになりますか?」という質問をしました。
「生活が成り立たない」「暴力が出る」場合に、とのお答えをいただきました。

臨床の現実として、良くなったと納得がいったケース、つまり今回紹介したようなケースは全体の3割、なんとなくいいのかな?程度に終わったのが3割、うまくいかなかったのが4割、ということを言われました。
非常に率直なお話をしていただいた、と思います。

画像は朝の杏樹(アンジー)との散歩で見かけた、ご近所の居眠り天使。

心理療法
2017/03/18
KSCC統合的心理療法セミナー(5)ーW講師による、ケース スーパービジョンー  
最後に、東豊先生と野末武義先生による「ケーススーパービジョン」に入りました。「臨床事例」は、「夫の定年を前にして、家事を教えようとする妻が、なかなか上手くならない夫に対して苛立ってしまう」というものでした。最初は妻一人でカウンセリングに来たけれど、「夫も連れて来ます」ということで夫婦でのカウンセリングになったということでした。

事例報告者から逐語的な記録が提示され、3パートに分けて、随時に参加者から質問を受け付けたり、二人の講師からのコメントがあったりしました。(資料は、研修後回収)

まず、最初の部分で、東先生から「家族の構成メンバーが知りたい」との質問がありました。これは、「今後、誰がどう動く子どができるか?」を確認するためだと言われました。家族構成は夫婦以外に、長女、長男で、両方共30代。まだ結婚はしていない、とのことでした。仕事もしていて、両親には余り関わってこない、ということでした。

野末先生は、「夫は、どのように妻に言われて、それをどう思ってカウンセリングに来たのか?」と聞かれました。「妻から、もっとできるはずなのになかなか出来ない、それで困って相談に行きたい」と言われ、それに夫も同意している、とのことでした。続けて、「なんでこの段階で来たんだろう?」と質問されました。妻の両親は健在かどうか、聞かれました。つまり、「親の亡くなった年齢に近くなったら鬱っぽくなる人もいる」ということで、それを気にかけていらっしゃいました。「それともempty nest?」と言われたので、ん? empty nest?空の巣症候群? ああ、何か喪失体験を言われているのか、と思いました。妻の両親は、妻の最初の結婚時には健在だったようですが、上の子が生まれた時に亡くなった、とのことでした。ここで、妻は今の夫とは再婚で、姉は、先夫との間にできた子であることがわかりました。(夫は初婚)
その他、野末先生からは、「セラピストはふたりとも、うなづけることを最初に言うことが大切」という指摘がありました。

次の部分で、妻の夫に対するDVが出て来ました。すぐさま東先生から、「あなたはそのままカウンセリングを続けたのですか? 僕ならもうここでアウトですよ。」と言われました。継続するなら「暴力をしない、という契約のもとでセラピーを継続する」と。契約できないなら、セラピーは打ち切りだし、DV対策も含め、対応できるところにリファーする、と言われました。

東先生の強い語調に、私を含め参加者は、ちょっと、え? という反応だったと思うのですが、引き続き先生が「だって、そうでしょう? これが、夫から妻への暴力だったら、皆さんすぐにDV、と思って対応するでしょ? なのに、妻から夫ならいいんですか? まあいいか、になるんですか? それは、明らかにジェンダーバイアスがかかっているでしょう?」と言われて、ハッとしました。

「皆さん、よろしいですか、セラピストの陥りやすい間違いは、共感することを訓練されているから、『この人もこの人なりの傷つきがあるのだから、と暴力を甘く受け止めてしまうことですよ。『受容』『共感』に反すると思うからでしょうか?」

「妻自身が、暴力的な家庭に育ったのでしたね。そうすると、『子どもの時に嫌だったことを、今自分自身がやっている。そのことをどう思うのか?』と妻に問うべきなんですよ。そうでないと不適切な養育の反復が起こる。」

「ダメなことはダメと言うことで、関係が深まるのですよ。」

野末先生からも「暴力を振るう前に何が起こっているかを見る必要がある。怒りの前に傷つきがある。『暴力を続けていると二人の関係を壊すことになるけれど、その覚悟はあるのか』と聞く必要がある。悪循環を作っているのは妻なのだから。」という言葉がありました。「『暴力を振るって、結果、何かいいことはあったのか?』とメタ認知させることも必要」と言われました。

さらに、野末先生からは、「もう少しセラピスト主導でいいのではないか? 夫婦合同面接と個人面接とを組み合わせ、妻の個人面接だけでするという選択があっても良かったのでは」とのコメントでした。「夫との個人面接では、どのように妻と関わるか、アサーション的な関わりを勧めること、また、『暴力を受けている、この関係でいいのか? どこまでそれに付き合うのか?』を夫に聞く必要がある」と言われました。

最後の部分からは、妻の躁鬱が疑われる状態が示され、参加者からも医療機関との連携はできないのか、といった質問もありました。

野末先生は「妻の鬱ってどんなものなのか、源家族の時のキズつき? 個人としてのキズつき? それを聞いてみて、本人が触れたくないようなら『なぜ触れたくないのか』と聞く必要がある」と言われました。野末先生が(これとは別に)合同面接のトレーニングを見ていて、傾向として「なぜ、それ以上聞かないの?」と思われることが多々あるそうです。クライエントの話される言葉だけを拾ってそのまま受け止めてしまう。「踏み込み過ぎ」を恐れるのか? と。

「エモーション・フォーカスト・セラピー」はそうじゃないはず。丁寧に関わるということは言ってないことに触れないことではない。それは本当の受容でも、本当の共感でもない。

また、「循環的に何が起こっているか」への気づきを促すこと、「結局は本人にとってプラスのことはない」に気づかせることも、「共感」になる、と。「クライエントの視野を広げる」こともセラピストに必要なことで、それは次へのステップになる、と。

他の事例として、「親に謝罪させたい」と要求してきたクライエントに対して、断った、という話をされました。「自分のやっていることが自分にとってプラスになっていない」ことをきちんと伝えたそうです。

東先生は、「限界設定が必要」という話をされました。それはまず、セラピスト側の問題として、「問題と思う意識が出てくるものは、自分が苦手としているものなんだ」ということだそうです。それは悪いことではなく、人間誰しもオールマイティーではない、とのこと。その場合、リファーできる関係機関を数多く持っているか、が大事だと。そして、リファーする場合は、クライエントにもそのことを聞くこと、と。

あっという間の2時間半でした。本当に考える視点をたくさんいただいた、実り多い時間でした。

画像は、自宅の階段。お気に入りのミュシャのリトグラフが、下半分になってしまいました。

補注)エモーション・フォーカスト・セラピー
感情とはいわば「自己の内なる他者」であり、自己を破壊するものにも自己を構成するものにもなりうる。EFT(エモーション・フォーカスト・セラピー)は、神経科学や基礎心理学の最新知見、「空の椅子の対話」「二つの椅子の対話」という特徴的な技法、多様な心理療法の統合によって、この感情という未知の領域を踏み分け、感情調整を試み、かつてない自分に変容するための好機(chance)としていく。EFTの創始者は、レスリー・グリーンバーグ。

補注に対する感想)う〜ん…エンプティチェアー(空椅子)は、ゲシュタルト療法ではなかった? レスリー・グリーンバーグって何者?  もうちょっと調べます。




心理療法
2017/03/17
KSCC統合的心理療法セミナー(4) ー野末 武義 先生 ③ー  
個人面接と夫婦・家族合同面接の比較をするにあたって、まず、それぞれの「メリット」と「難しさ・留意点」を整理されました。それは次のとおりです。

<個人面接のメリット>
  ・  目の前にいるクライエントの語りに集中することができ、観察も複雑ではない。
  ・  信頼関係を築くことはさほど難しくない。
  ・  クライエントは家族の反応を気にしないで自由に話をすることができる。
  ・  セラピストは、クライエントと家族との葛藤や衝突に直接介入する必要はない。
  ・  クライエントと家族との境界を明確にすることができる。
  ・  セラピストは、自分の価値観とクライエントの価値観が違っていたとしても、クライエントに合わせて尊重することはさほど難しくはない。

 <個人面接の難しさと留意点>
  ・  クライエントが語る家族像や家族との関係は、あくまでもそのクライエントにとっての心的現実であり、実際の人物や関係とは異なることが珍しくない。
  ・  クライエントと家族との実際の関係やコミュニケーション・悪循環を観察することができない。
  ・  クライエントと家族とのコミュニケーション・悪循環に直接介入できないので、クライエントが変化するしかない。
  ・  クライエントの感情や認知が変化しても、家族との関係は変わらないことがある。
  ・  クライエントの肯定的な変化は、家族には否定的に捉えられることがある。
  ・  セラピストがクライエントやパートナーとの関係に与えている影響を意識化しにくい。
          ①  うなずきもクライエントに影響を与える。
          ②  セラピストとクライエントが秘密を共有することによるパートナーの排除
          ③  見えない三角関係に巻き込まれる危険性:セラピストが促進する離婚(therapist–assisted divorce)

いやあ…、これにはびっくり! でした。最初の「心的現実」は認識していましたが、それ以外の指摘は、ホント目から鱗、でした。特に最後の項目は、そうなのか…と、考え込んでしまいました。

<夫婦・家族合同面接のメリット>
  ・  一人ひとりの言い分を公平に聴くことができ、それぞれの違いも明確になる。
  ・  クライエントと家族の個人としての特徴や、コミュニケーション・悪循環を直に観察することができる。
  ・  セッションの中で夫婦・親子の関係や葛藤に直接介入し、変化をもたらすことができる。
          ①  語りの少ないメンバー、パワーの弱いメンバーの自己表現の促進
          ②  語りすぎるメンバー、パワーの強いメンバーの聴く姿勢の促進
          ③  より公平な関係へ:衝突・喧嘩から対話へ
  ・  複数のメンバーに同時に同じメッセージを伝えることができる。
  ・  関係の中での自己理解・他者理解・関係性理解の促進
  ・  セラピストの関わり方が、家族と関わる時のモデルとなる。
  ・  症状を抱えている個人のサポート資源として家族の理解や協力を得られやすくなる。

この中での私の発見は、「セラピストの関わり方が、家族と関わる時のモデルとなる」ということでした。…そうなんですね。セラピストは「関わり方のモデル」を体現しているのですね。…確かに。言われてみればそうなのですが、意識して考えていませんでした。

<夫婦・家族合同面接の難しさと留意点>
  ・  家族全員が同じ目的・動機・意欲で来談しているとは限らない。
  ・  家族と同席していることで、語りにくいことが生じる可能性がある。
  ・  複数のメンバーがいるので、より複雑な観察が要求される。
  ・  セラピストは、セッション中に生じる家族の葛藤・衝突に対処しなければならない。
  ・  葛藤状態にある家族とセラピストとの適切な距離の難しさ。
  ・  セラピストの価値観が家族のいずれかの価値観と似ていて他と大きく異なる時、セラピスト自身の感情的反応に気づき、その影響を適切にモニタリングしていないと、否定的な影響を及ぼす可能性がある。
  ・  もし、家族に内緒で一人で面接を受けに来たいと言われたら、どうしたら良いか。

「セラピストは、セッション中に生じる家族の葛藤・衝突に対処しなければならない」ことの補足説明として、「どのタイミングでとめるかか、が大事」と言われました。家族間の言い争いを、どの時点で介入してとめるか、という意味です。衝突がこれまで顕在化していなかったのなら、少し出させた方がいい、という判断もあり得るということか、と理解しました。

また、最後の項目については、「ケースバイケース」と言われながらも、「パートナーや家族にそのことを話していますか?」「どう言われましたか?」というように、パートナーや家族がそのことを了解していることを要求し、OKなら引き受ける、と言われました。特定の家族との「秘密を共有」することは、その後のセッションを続けて行く上で危険だから、ということでした。それで、「言いたくない」と言われたら、なぜか? と聞く、ということも言われました。

「セラピストの価値観が家族のいずれかの価値観と似ていて他と大きく異なる時」など、確かにそのことをうっすら意識はしていましたが、このように明確に言語化されて、問題がはっきり認識できました。

という流れから、「個人面接と合同面接の併用」(Feldman,1992)を紹介されました。

    ・  対称型:合同面接と個人面接を交互に同じ頻度で実施する。
    ・  非対称合同面接主導型:合同面接をより多く行い、それよりも少なく個人面接を組み入れる。
    ・  非対称個人面接主導型:個人面接を主とし、合同面接を組み入れる。

印象に残ったのは、最後の先生の補足説明でした。特にパートナとのセラピーについてです。「セラピーにくるから関係を維持したいと考えているかどうかは定かではない。修復したいかどうかもわからないから、確認したくてくる場合もある。」なるほど。全くそうですね。最初からセラピストが「関係修復したいのだろう」と決めつけてはいけませんね。その辺りのクライエントの心のひだを丁寧に聴き取って行くことが必要ですね。

この後、東豊先生と野末武義先生のダブル講師によるケーススーパービジョンが行われました。これは、次回。

画像は、自宅の玄関。「Rカフェ」のまねをして、昨年、奈良に帰った時に、壁に時計を取り付けてみました。

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