昨秋に引き続きの吉良安之氏の講演。
今回は「クライエントを支えるとはどういう行為なのだろうか」という「問いかけ」から始まった。
用意くださった資料には次のような定義がなされていた。
「積極療法」=・心身の働きの失調の背後に想定される心理構造(病理)に対してさまざまな技法を駆使して操作的に介入して、その構造の変化(改善)をはかる。
・代表例としては精神分析療法、行動療法。
・技法性・操作性の高度な積極療法ほど、治療対象とのマッチングが問われる。マッチすればシャープな治療効果。
「支持療法」=・心理構造への直接的な介入や積極的な技法的操作は控える。代わりに患者の訴えや語りを深く理解し(受容)、患者の内に生起する情動を的確に追体験し(共感)、それによって患者の心を保護し、その自己回復を支える。
・この方法を徹底的に追求して基礎づけたのは非指示的カウンセリング。
・適応は、比較的軽い失調で自己回復が見込めるケース、逆に重度の失調で積極療法の遂行が困難なケース。支持療法は、シャープさはない代わりに汎用性が高い。
つまりは。クライエントの状態によって、あるいは、カウンセラーの技量によって、双方の「使い分け」が必要、というスタンスか、と思っていたら。
「支持療法」は地味であまり見栄えしないから、カウンセラー自身にマンネリ化に陥る危険性もある、と。
それで、「しかし、現実の多くの臨床というものは、そもそもが平凡であまり見栄えのしないことを地道に続けていくことも上に成り立つものではないだろうか」という、青木省三氏の言葉の引用もあって。
それにしても「何をしたら、何を言ったらサポートになるのか?」の問いに対して、これまでのご自身の体験事例から検討されていく様子は、とても丁寧で。
資料には、次のような例も出されていて。
《心配しています》→「心配されたくないです!」
《大変ですね》→「そんなに大変な状態ですか。ショック!」
《なるほど、わかります》→「そんなに簡単にわかってたまるか!」⇨言葉の工夫《少しわかるような気がしてきました》◎やりとりの言葉遣いにも要工夫
…まあ、ね。
確かに、そんなふうなチグハグなやり取りになってしまったら。もうこれはカウンセリングが進まない。
しかし。思うに、そもそも「心配されたくないです!」や「そんなに簡単にわかってたまるか!」という反応は。
そもそもクライエントとカウンセラーとの間に信頼関係が成り立っていないからじゃないか? と思ってしまう。
そうすると。
兎にも角にも、まずはどれほどクライエントに、「早急に信頼されるか」が重要、ということで。