朝。目覚めの微睡(まどろみ)の中で。
人と交わした言葉の断片が、ふいに私の中で蘇る。
長田弘の詩「最初の質問」の中で、
「問いと答えと/いまあなたにとって必要なのはどっちですか。」とあって、
「え? どっち?」と問われ、即座に
「問い、でしょ。」と答えた。「どんな問いを立てるか、で、人生は変わってくるのだから。」
訝(いぶか)しげな、問うた人をよそにして、それ以上の言葉を私は重ねなかった。
…多分、それ以上の答えは自分で探すもの、だから。
「やっぱり、先生のお子さんですよ。即座に反応して返してくる」
子どもに会って話をしてくれた教え子Nくんの言葉。
「うん…ただ、刃物のような鋭さ、というか。ひやっとする冷たさを感じる鋭さ、というか…。」
「そうね。多分…そうだろうね。それは、今ある自分で反応して、応えられるものに即座に反応する鋭さ、ね。」
「応えられないものを自分の内で廻らせる、ことをしないから、判断が浅薄になる。…多分、これからのあの子の課題だろうけれど。」
Nくんには、私の言っていることが十分伝わった、ようだった。