「私の母は、いわゆる毒親、なんです。」「私はアダルトチルドレン、だと思います。」
支配的な母親からの自立を目指して、相談に来られている30代女性。
ご自身が置かれている状況も、冷静に分析されての、最初の言葉が印象的でした。
コロナ感染増加のニュースが流れる中、お母さんの関心の矛先も本人から少し離れて。
それで、とりあえずは、「安定した日々」を送れている、というのですが。
私は、うーん…と唸ってしまいました。
私がどんなことを危惧したと思われますか?
親の顔色を見る生活
こんにちは。
奈良県生駒市でカウンセリングルーム沙羅Saraを開設している葛原昌子と申します。
私が何を危惧したか、と言いますと、それは常にお母さんの動向を気にし、
親の「顔色を見る」生活をされているんだなあということです。
もちろん、毎日の家庭生活が穏やかで、心地良いものであることは望ましいことです。
しかし、それがお母さんの動向に左右される状況というのは、よろしくない。
それは、何か言われて動揺する自分がいる、ということなのです。
すると、いつも「何か言われないだろうか」を気にして、
何か言われないように先回りしてあれこれ考えるクセができてしまう。
ね? ヘンでしょ?
どうしてそうまで、お母さんに何か言われたくないのか。
言われたってそのままにしておいたらいいじゃありませんか。
だって、それは「お母さんの考え」なんだし。
「お母さんの感覚」なんだし。
お母さんの考えや感覚が正しいってわけでもないでしょ?
成人して何年も経っていて、社会人として立派にお仕事されていて。
そんなあれこれを言われなくったって、良いわけ、でしょ?
職場でのご自分と、家でのご自分のギャップが大きすぎる!
もちろん、親にとっては子どもはいつまで経っても子どもでしょうけれど、
生物学的に「子」であるということと、「子ども扱いされる」ということは違います。
うん。お母さんは分かってないね。
でも、そんなお母さんに、なぜあなたが合わせなければならないの?
同じ次元に立たないようにする、ということが大事ですね。
あなたに関して、何か言ってきたお母さんを無視するわけにはいかないでしょうから、
まずは「そうなんだね」「そんな風にお母さんは考えているんだね」と返しましょう。
それはお母さんの「意見」「考え」であって、それを私が受け取らなければならない、ことはない。
それから、おもむろにその場を離れましょう。
何も、お母さんの「集中砲火」を浴びないといけないことはない。
さっさと自分の部屋、自分のテリトリーに引きこもりましょう。
でも、追っかけてくるお母さんだっていますよね?
その場合は、「お母さんの考え(感じていること)は分かった」と一旦、引き取りましょう。
ですが、「引き取る」ことは「引き受ける」ことではありません。
引き取って、横に置いておいたらいい。
そして、お母さん本体は、「お引き取り」願いましょう。
「ここは私の部屋だから」と。出て行ってもらいましょう。
何より、あなたが安らがないと。家に帰る意味がありませんね。
空間を別にすることの必要性
さて。しかし毎日がこんな風だとうんざりですね。
その場合は、ひとり暮らしを始めてもいいのでは? と思います。
私などは、ひとり暮らしをしようとして、親に「家を出る時は結婚する時だ!」と反対され、
「じゃあ、結婚する」と結婚して、失敗したなあという記憶があります。
最初に、ひとり暮らしをすればよかった…と後で気づきましたが。
ひとりで暮らすと、いろんな気づきがあります。
自分の淋しさとも向き合うことになりますが、それは必要なことです。
誰かと一緒の生活を始める前に、自分はどんなリズムで生活していきたいか、
生活のどんなところにこがわりがあるか、などいろんなことが見えてきます。
それは大事なことだと思うのです。
特に、親からあれこれ言われて育ったアダルトチルドレンは、
自分が何を望んでいるか、を考える前に、
「ねばならない」が先にある生活を送ってきたので、
自分が何を望んでいるか自体がわからなくなっていることが多いです。
親からの支配は、外にあるのではなく自分のうちにあるものだから、
厄介ですが、手立てはあります。
「この人」と思って結婚を決めたとしても、育った環境も違うのです。
何より先に、自分のペースって何? をつかんでから、
新しい生活を築いていってもいいのではないですか?
遠回りのようでも、それが、結婚生活を上手くやっていくスタートラインのような気がします。
空間を別にする、のは、親だけと、ではないのです。
どんなに大切な人と、であっても必要なことであるように私は思います。
そして、どれだけ自分に「分析」をかけても、
「つい、やってしまう」ループから、なかなか逃れられない、ことって多いと思います。
それが大事なことであればあるほど。
だからカウンセリングがあるのだ、と思います。
頭で分析することと、実際に行動していることに差がある、ことを見据えつつ、
無理なく、現実を変える取り組みをサポートしていこうと思います。