先日、ひとりの女性からお問い合わせがあったのは、
ご相談者本人のことではなく、知人男性のこと。
50代のその男性は、どうも妻を恐れているように見える、というのです。
お話を伺っていて、以前にも、男性のそういった「恐妻家」の相談があったのを思い出し、
DV被害であるかどうか、のチェックポイントを整理してみることにしました。
こんにちは。
奈良県生駒市でカウンセリングルーム沙羅Saraを開設しています、葛原昌子と申します。
以前、私は「DVチェック表」をまとめたコラムを書きました。
女性を対象としたものなので、厳密には男性には当てはまらない点もありますが、
基本的には、同じ項目で考えることができます。
すなわち、DVとは、以下の項目が当てはまるときです。
- 「経済的暴力」
- 「社会的隔離」
- 「身体的虐待」
- 「心理的虐待」
- 「性的虐待」
そのうちの、特に目立つ3点について説明しましょう。
「経済的暴力」
男性が働いて、お金を稼いでいたとしても、
そのお金の使い道を制限される形が多いです。
夫婦二人で話し合って決める、というより、一方的に決めつけられ、
異議を唱えるとひどい言葉を投げつけられたり。
あるいは、給料振り込みの預金通帳を握られ、
小遣いもままならなかったり。
「社会的隔離」
外に働きに出ていく男性を「社会的隔離」なんてできるのだろうか?
と思いますよね。
たとえば、LINEやメールのアカウントを乗っ取って、
本人の知らないところで、本人になりすまして更新していたり。
そんなお話もお聞きしました。
信じられないようなことですけれど。
もうそれは「犯罪」であると思われるのですが。
このように、人間関係を壊していく被害があります。
「心理的虐待」
稼ぎが少ない、無能である、気が利かない…
そういった言葉で、罵られる。
自分はどんどんダメな人間なんだ、と自信を失くし、怯えた状態になっていく。
さて。周囲にいる人は、どんなふうに支援できるでしょうか。
まず、私がお勧めしたのは、「DVチェック表」があることを知らせることです。
「5つの虐待」として、整理されていますから、
どういった観点で、今の自分の状況を見ていったらいいのか、の視点が得られます。
そういったことを「知ろうとしない」「避ける」というのは、
残念ながら、関わっていくいのが非常に難しくなりますね。
なぜなら、女性の場合もそうですけれど、
本人が、自分の置かれている状況に対して、
「何かおかしい」「何か変」と思わない限り、誰も手を差し伸べてあげることができないからです。
今はまだ、そう思えなくても、もしかすると、もうちょっと先で
今の自分の状況に疑問を抱くかもしれない。
そう思えば、「チェック表」をプリントアウトして、手渡しておく、のもいいでしょう。
しかしそれにしても、どうして、そんな辛い現実から目を逸らすのでしょう?
それは、過去の自分の選択が「間違っていた」と認めるのが怖いからです。
そして、現状が辛いものであっても、とりあえずなんとか毎日を過ごしている、状態で、
もう今の状況を変えるエネルギーが出てこない、からです。
そうですね。その気持ちもわかります。
ですが、「もう嫌だ。自分の人生、このままじゃイヤだ!」「なんとかしたい!」
となるには、やはり、一度、DV加害者から離れてみることが必要かと思います。
そんなこと! とんでもない! いったい何を言われるか!
そういう反応が返って来そうです。
ですが、大人になっていくということは、
経済的にも自分を養えるということは、
子どもの時と違って、自分の自由度が増えることだと思います。
自由度が増える、というのは「自分で判断する」「自分で決断する」場面が増えること。
今がそうでない状況であるならば、一度ひとりになって考えてみてもいいのではないか、
と思うのです。
いったい今の状況は何なのだろう…?
いったいいつからこんなことになったのだろう…?
自分は何を望んでいたのだろう…?
考えることはたくさんあります。
何より、自分の心の安定を図るには、どうすることが必要なんだろう? を考えてみてほしい。
自分ひとりで生きていけない、ように思わされていないか。
やってみれば案外、大丈夫、なんじゃないか。
家事に不安を覚える人もいますけれど、
洗濯は洗濯機が、掃除は掃除機がしてくれます。
食事を作ることはすぐさまは難しいとしても、
それは、お弁当を買ってきてもいい。
まずは、自分がほっとできる状況が必要な気がします。