久しぶりの桃月句会、リアル参加。
東向商店街を南下していくと、シャッターが下りているお店が続く。
…まあ、「奈良時間」だから、ね。早くに店が閉まる。
それでも、不動産屋さんの看板が掛けられているお店が幾つもあることに気づく。
…はあ。コロナ、持ち堪えられませんでした、か。
それにしても。
随分オシャレな店先が並んでいる、ことに気づく。
…そうね、私の子どもの頃とは違うわ。
ちょっと垢抜けた感じの、店頭。
いくら日が長くなってきたとはいえ、急がないと。
今日は、新生「松前旅館」さんでの、初めての句会。
場所、わかるかな?
暮れ泥んでいく猿沢池の側を通りながら、思わず倉橋みどり先生にSOSの電話をかける。
意外にすぐ近くに「松前旅館」。
今回は。夏目雅子の句を取り上げる、とのことで。
夏目雅子って、あの早世した夏目雅子、よね?
西遊記の三蔵法師さま。
俳句なんか詠んでいたの?
なんでも。倉橋先生、夏目雅子の写真集を買われて。
その写真集に、彼女自作の句が一緒に編集されているそうで。
『写真・句』集とでもいうべきもの?
「海童(かいどう)」というのが、「東京俳句クラブ」に所属していた夏目雅子の俳号だそうです。
紹介された24の句のうち、私の印象に残ったものは次の2つ。
・セーターの始めての赤 灯火(ともしび)に揺れて
五七八って。大幅に字余りだけど。
「始めての」って、これ漢字変換ミスじゃないんですよ、と説明があって。
いえ、最初に目にした時、何か、「始まる」感じを謳いたかったんだなあと感じた。
何か。特別な時間。特別な人との何かが始まる、と思った時に、セーターの赤が迫ってくるように感じられた、のではないか?
その赤の本当の色づきを、今、感じられ始めた、というような。
そうすると。モノトーンだったそれまでの世界が、一気に華やかに色づく、みたいな。
句会の時には、そこまでの解釈を披露できなかったけど。
今、これを打ちながら、段々とこの句の輪郭がはっきりしてきた。
・冬暮れに芝焼き萌える天を見つ
この句はそのまま五七五。
草木が「萌える」のは、芝が焼かれて、もう少し時間が経って、春、のハズ。
けれど。芝を焼いているのをみて、夏目雅子は、その先の、春に芽吹く草木の「萌え」を同時に「見た」のではないか。
この自在なイマジネーション、そのイマジネーションを表現する一語、を選ぶ確かさに驚嘆する。
とても良いものを見せていただきました。
倉橋先生の、審美眼、素敵です。
画像は、松前旅館さんに設置されていた像。
軽やかに音楽を奏でるありようは、一語でスパッと世界を切り取る俳句のありようと対局のようだけど、
自分の音や言葉で自分の観る世界を構成する、自分の観る世界を表現する、という点において共通するように思えました。