この人の前に座ったのは、何時以来だったろうか…
白い口ひげ、灰褐色の瞳を見つめながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
…そうね、11月以来だから、半年ぶりか…。
この半年。
母が24年、私が3年住んだ家から引っ越す準備に追われた。
広島からマンションを処分して帰ってきたから、引っ越しは大丈夫、と思ってた。
それがとても甘い考えだったことに、後から気づいて。
…モノが後から後から湧いて出るように、ゾロゾロと。
押し入れの中にあって、普段その存在も忘れていたモノが、山ほどあって。
それで、引っ越し後の疲れもどっと出て。
2月に子どもの下宿を引き払うのだって、手伝いに行ってあげる!なんて言ってたのに、
心身共に疲れてしまって、まるで動けなくなって。
そうこうしているうちに、母も入院したりして。
「今、私の頭の中に2つのことがあって。
ひとつは、母とのこと。もうひとつは…私にとってゲシュタルト(療法)って何?っていうのが、分からなくなっていて。
それをつかみたい、という気持ちがあって、ここに来ました。」