今日は、タイトルからイメージした詩の内容がかなり違っていて、ん? と思う詩を。
入沢康夫の「未確認飛行物体」という詩です。
「読書への誘い」第57号で紹介しました。
「未確認飛行物体」 入沢康夫
薬罐だつて、
空を飛ばないとはかぎらない。
水のいつぱい入った薬罐が
夜ごと、こつそり台所をぬけ出し、
町の上を、
畑の上を、また、つぎの町の上を
心もち身をかしげて、
一生けんめいに飛んで行く。
天の川の下、渡りの雁の列の下、
人工衛星の弧の下を、
息せき切つて、飛んで、飛んで、
(でももちろん、そんなに早かないんだ)
そのあげく、
砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、
大好きなその白い花に、
水をみんなやつて戻つて来る。
(詩集『春の散歩』1982年・青土社刊)
「未確認飛行物体」って、いわゆる「UFO」ってやつですよね。
薄い円盤形の、ちょっと近未来的でスマートな。
得体が知れなくて、謎めいていて。
でも、とっても動きが速くて、私たち地球の技術では追いつけなくて。
で、「未確認」に終わってしまっている。
なのに、薬罐(やかん)、だなんて。
まるっこくて、…そうね、ちょっとあちこちポコッとしたへこみがあったりして。
その、まるでスマートとは縁遠い薬罐くんが、空飛ぶのね。
町を越え、畑を越え、また別の町を越え…。
「天の川の下、/渡りの雁の列の下、/人工衛星の弧の下を、」って、また雄大な。
息せき切って、どこに行くのかというと、
なんと、砂漠。
「砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、/大好きなその白い花に、/水をみんなやつて戻つて来る。」
だなんて…。なんていい奴なんだろう!
それも、「夜ごとに」だから毎夜毎夜、なんだよね。
健気(けなげ)だよね。
「こっそり台所を抜け出」すんだから、誰にも知られないようにして。
(そりゃあ、薬罐が空飛んでたら、みんな驚くわ。)
薬罐くんのはやる気持ちが「心もち身をかしげて、/一生けんめいに飛んで行く。」「息せき切つて、飛んで、飛んで、」に表れていて。
でも残念なことに、「(でももちろん、そんなに早かないんだ)」なんて。
うーん、なんか、太っちょさんがフウフウ言いながら走っているみたいで。
全くもってかっこよくないんだけど、でも、なんだか、ね。
ほほえましいような、暖かいような。
誰かを好きになるというのは、こんなふうに、いろんなことが出来ちゃうんだね。
でも、自分が水をあげに行かないと!という使命感は、薬罐くんには嬉しいんだろうなあ。
だって、なんにせよ、毎晩会えちゃうわけだから。
それにしても…砂漠に咲いた一輪の花を、薬罐はどうやって見つけたんだろう…?
あ、空っぽの身軽なまま、ふらふらと夜間飛行してたんだね?
台所、抜け出して。
ちょっと、遠出をしたときに見つけたんだ、きっと。
夜中に、もしかしたら薬罐が飛んでいるかもしれない、なんて想像したら、ちょっと心楽しいね。
眠れない夜には、この薬罐くんと一緒に町や畑や…の上を飛んでみてもいいのかもしれない。
あったかい気持ちになって、あれやこれやが気になる自分に「うん、よくやってるよ、私」と声かけして。
そんなふうに自分を認めてあげて、眠るときぐらい、いろんな「荷物」を降ろして、休みましょう。ね?
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