3月に入って早1週間が過ぎました。奈良は「お水取り」のさなかです。
今回は、アーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』から、「はるがきた」を取り上げたいと思います。
“かえるくんは、おおいそぎで はしって、
がまがえるくんの いえを たずねました。
げんかんの ドアをコツコツ。
でも、へんじがありません。
「がまくん、がまくん」かえるくんが大きなこえでよびました。
「おきなよ。はるがきたんだよ!」
「でたらめ いってらあ。」
いえの中から こえがしました。
「がまくん!がまくんたら!」
かえるくんは さけびました。
「お日さまが きらきらして いるんだよ!
ゆきなんか とけちゃっているよ。おきなよ!」”
かえるくんが春の訪れを知らせに来たのに、がまくんったら、ベッドで布団をかぶったまま寝ているんです。
かえるくんは、がまくんをベッドから押し出し、玄関の前に連れて行きましたけど、
がまくんはぎらぎらするひなたで目をぱちくりさせて「助けてくれよ!」と言うばかりで。
“「ばかなこと いうなよ。
きみが見ているのは 4月のすきとおった あたたかいひかりなんだぜ。
つまり、ぼくたちの あたらしい 一年が また はじまったってこと なんだ。
がまくん。そのことを おもってごらんよ。」”
だのに、がまくんったら、まだ寝ると言うんです。
“「もうすこし ねむったって わるくないだろ。
5月のなかばごろになったら、 もう一回きて おこしてくれたまえよ。
おやすみ かえるくん。」”
まあ、まあ、いったいどうしたことでしょう!
がまくんったら、起きそうにないんです。
それで、かえるくんはどうしたと思います?
“かえるくんは がまくんのカレンダーを見つめました。
いちばん上は まだ11月になっていました。かえるくんは11月をやぶきました。
12月もやぶきました。
1月も。
2月も。
そして3月も。
4月がでてきました。
4月も やぶいてしまいました。”
なんとまあ。かえるくん、強硬手段ですね。
“「がまくん、がまくん、おきなよ。もう5月だよ。」
「なんだって?」がまくんがいいました。
「5月って そんなにはやく くるのかなあ?」
「そうだよ。カレンダーをごらんよ。」
がまくんはカレンダーを見ました。1番上は5月でした。
「おやおや 5月だ。」
がまくんは、ベッドから はいおりながら いいました。
それから ふたりは、はるになると、
よのなかが どんなふうに見えるか
それをしらべに そとへ でていきました。”
ふふふ。かえるくん。やってくれるじゃないの!
カレンダー、破いちゃったんだ。
「春になると、世の中がどんな風に見えるか」ですか…。
私も今日の夜、お水取りに出掛けて春の訪れを感じたいと思います。