表紙の絵は毛糸玉を引き寄せている猫の前足。肉球がなんか可愛くて、どんなお話? とページをめくると、次のような言葉が続きます。
にわの いしころ
もちあげてみたら
もぞ むぞ
むぞ もぞ
だんごむし
ゆびで つんつん
つついてみたら
まるくなった
まあるくなった
こんころ ころろ
てのひら くすぐったい
こどもの好きなだんご虫。まるくってちっちゃくてかわいいんだけど、確かフンを食べて生きてた。なのに、うちの子ときたら、てのひらに乗っけてただんご虫が見当たらないと思うと…「Kちゃん!お口、あーんしてごらん!」舌の上には、たくさんのだんご虫がもぞもぞ動いてた。…というような思い出があります。
次から次へと「まあるくなった」ものが続くのですが、最後は…
かみふうせん
ふーっと ふいたら
まるくなった
まあるくなった
ふうわり ぱーん
ふうわり ぽーん
ふんわり おちて
まろのうえ
まろは めざめて
あくびした
でもまた ほらね
まるくなった
まあるくなった
ねこの まろ
と、表紙に出てきた前足の持ち主「まろ」が登場して終わります。
「もぞむぞ むぞもぞ」とか「つんつん」「こんころ ころろ」など擬態語(ぎたいご・「のろのろ」など、様子を表したもの)・擬声語(ぎせいご・「ピューピュー」など、実際の音から様子を表したもの)(併せて「オノマトペ」といいます)の響きが面白くて、楽しくお話が進んでいくのですが、最後、なんとなく「まろ」が出てきたところで、限りなく「まろ」への愛情を感じてしまって、まるでこのお話は「まろ」のために作られたかのように思えました。薄い二つ折の紙に「まろのこと」という作者の短い文章が載せられていました。…亡くなった「まろ」を想って作られたとのことでした。
…やっぱり、そうだったんだ…。「まろ」の肉球、「まろ」のあくびをした時のまあるい背中、しっぽ。すべてすべて懐かしくて恋しくて。そんな作者の想いが溢れてきて、そっと涙したことでした。(年少版こどものとも 1997年8月 福音館書店)