帯には「江國香織といわさきちひろ はじめてのひらがな詩画集」とあります。
2005年2月、講談社から第1刷が発行されています。
29個の詩と絵の世界が広がっています。
そのうちの、私の目に留まった3つを紹介します。
「パンプルムース!」
グレープフルーツのことを
フランスごでは
パンプルムースっていうのよ
きのうまでのわたしはしらなかったけど
きょうのわたしはもうそれをしってる
だからね
いつかフランスにいったら
レストランのテーブルにつき
すましてこうちゅうもんするの
パンプルムース!

なんだか、ちょっと得意げな表情をして、椅子に座った女の子が、脚をぶらぶらさせながら、斜め30度に顔を上げて言っている、感じ。
うん、おしゃまさん、っていう感じかな。
昨日の私と今日の私は違うんだよね?
…そうそう。毎日が「成長途上」なんだよね。
「挫折」なんて縁がないね!
うん、まだ、知らなくていい。…もっともっと、あとでいい。
「なくときはくやしいの」
なくときは くやしいの
かなしいんじゃなく
さびしいんじゃなく
ただ もう くやしいの
からだのなかがあつくなって
そとにそれはでていけなくて
もんどりうって
おおあばれして
ただ もう やみくもにくやしいの

ああ! そうだなあって思いました。
悲しいのではなく、淋しいのでもなく、「悔しい!」って時、ありますよね。
その気持ちが身体の中で大暴れする。
そんな時は、どうやって鎮めますか?
「大丈夫、大丈夫よ。…私は分かっているからね。」
そんな風に私は私をなだめて来たように思います。
あ、そうか…! 私は杏樹(アンジー)の背中をトントンしながら、私をトントンしてたんだね…!
「おさけのみになるほうほう」
すてきなよっぱらいをみること
ゆかいはすてきとしること
からだをおんがくでみたすこと
せかいはすてきとしること

「素敵なよっぱらい」は、陽気だと思う。
悲しい時に、悲しみに沈むのは嫌い。…それは独りよがりだから。美しくないから。
「陽気とビョーキは親戚だね〜」なんて、言ってたこともあるなあ、私。
私のお酒は、陽気。辛気臭いのは嫌。誰も幸せにしないから。
…それにしても、「愉快」と「世界」も、近いんだね。
誰もが孤独を抱えている。…そんなことあたりまえ。
だからこそ、人を思いやれる。
今の瞬間を、ああ、美しい…と感動できる。
この瞬間に死んでもいいな、とさえ思う。
そうね。癌が発覚してから12年目になった。
その時は、子どもが小学生だったから「まだ死ねない!」と思ったけど、子どもも成人したから、もういいよね。
今はどこか「余生」気分。
私がいろんな場所での日の出や夕日を見たくなるのは、「世界は美しい」と感じたいためである気がする。
子どもの頃の私は、苦しくて苦しくて、生まれて来たのを悔やんだりしたけど、でも! 世界はこんなにも美しいというのを感じて、私のインナーチャイルドに、あなたのいる世界は、こんな風なんだよ、と言ってあげたいんだと思う。
…そうなんだよ…世界は素敵なんだ。だから、生まれてきてよかったんだよ。
そうだね。…たくさんの素敵な人にも会えたしね。
私の残り時間は、自分に出来ることを積み重ねたいね。
それが誰かの役に立つなら、とても嬉しい。
誰かの安らぎにつながるなら、とてもとても嬉しい。