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個別化で経済は動き、主体者が置き去りとなる〜第2回読書会〜

2019/12/02
個別化で経済は動き、主体者が置き去りとなる〜第2回読書会〜
第2回読書会は、第5章第2節「『家族介護』とは何か」から。
その部分は「復習・振り返り」のハズだったのだけど、読み合わせていくうちに、その節だけで終わってしまった…。
まあ、別に先を急ぐ必要は何もないから、それでいいのだけれど。

第2節冒頭は「日本の『家』制度も、『伝統』であるどころか、明治国家の発明品であることは、多くの法制史学者が指摘している」(P105)という指摘から始まり、その記述に続いて「仙田有紀〔1999、2011〕の指摘するように、『家』は戦後になって『近代的家族』(「近代家族」ではない)との対比のもとに『封建遺制』として再構築されたとすら考えられる。」(pp.105-106)と展開される。

ん? 「近代的家族」は「近代家族」と違うわけね。
その両者の説明がないのは、私たちが第5章から読んでいるせいで、前の部分に既に説明されているかもしれない。
…ここは、ひとまず保留。

「介護福祉の専門家たちは、『家族介護』そのものが、社会現象として歴史的に新しいことを指摘する。」(P106)とあって、その指摘の第1が「平均寿命の短さ」、第2が「同居に伴う扶養慣行が見られないこと」、第3が「三世代同居家族の同居期間が、現在よりはずっと短いこと」。

平均寿命は(1920年(大正9)の人口統計からしか信頼に値しないそうだが)、大正10年〜昭和5年の平均寿命は、女性46.54歳、男性44.82歳だという。
つまりは、「高齢者の人口学的な存在そのものが、歴史的には新しい現象」(P106)らしい。
高齢者人口比7%以上を「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」と呼び、それに従えば、「日本は1970年に『高齢化社会』に突入し、1994年に『高齢社会』の段階に入った。」(P106)

う〜ん、と。
確か、「超高齢社会」の定義もあったなあ。…調べてみると、21%以上の高齢化率が「超高齢社会」。

ちょっと、私、ここで間違った発言をしてしまった。
2019年現在の、日本の高齢化率は30%を超えているとアナウンスしたのだけれど、女性だけではそうだけど、全体では28.4%。(総務省統計局発表、2019年9月15日現在推計)
次回訂正しなきゃ、ね。


それにしても…2025年問題として「高齢化率30%超え」があったのだけれど、2018年から1年で0.3ポイント上昇しているそうだから、2025年を待たずに突入するなあ。

今、「2025年問題」として取り沙汰されているのは、「団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)が後期高齢に突入する」こと。

 

でもまあ、こんな統計的な話より、おもしろかったのは、皆さんの「雑談」。

Nくんの20代での「介護助手」体験やら、Yさんの「看護婦さん、怖い〜」談、それに応えるTさんの「看護師の内部事情」話。

…ちょっとまだ、皆さんの許可を得ていないので、公表できませんけど。

 

私が一番興味を引いたのは、「家族から切り離されて『個人』化したところに、経済が動き、その流れは『介護』サービスに及んでいる」ということ。

 

1980年代。「個性」が謳われて、個人向けの個別商品の販売が花開いた。

…そのことを、確か、『小論文作成のためのQ&A』(平成24年4月1日第3版発行)という小冊子に書いたような。

ちょっと長いですが、引用します。

 

 

 さて、これで解答を終えたわけですが、「消費は美徳」「高度経済成長」「便利」「快適」「新しい」「あなただけの」——こういった語句から、第二次世界大戦後の日本経済の「一連の流れ」を想起できれば、問題の所在がもっと見えやすくなったのではないかと思われます。それは、この入試問題だけに関わることではありませんので、かいつまんで説明をしておきましょう。

 

 1954年に始まった日本の「高度経済成長」は、1973年のオイルショックを以て終わり、その時期に生み出された「大量生産・大量消費・大量廃棄」を良しとする価値観は、原材料となる石油の高騰と大量廃棄ゴミをどうするかという環境問題から、見直しせざるを得なくなりました。

 

 そもそも、1970年代初めに「一億総中流」という国民意識が完成された、と考えられているのは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」(1958年開始)で「自分は中流」との回答が9割を占めるようになったことに由来します。その「中流」意識は、大量生産によって商品の価格が下がったこと、経済成長によって所得が増加したこと、終身雇用によって労働者の信用の増大して信用販売(=クレジット・カード払い)が可能になったことにより、それまで上流階級の者しか持ち得なかった商品が、多くの世帯に普及したことで生まれたものです。

 

 1980年代に入り、同一製品の大量販売では満足できなくなった「消費者」の心情をうまく捉え、「個性の時代」「私らしさ」が謳(うた)われるようになり、それまで家族間で共有であった日常品も個々人で揃(そろ)えるよう差異化した商品が生まれました。たとえば、朝に髪を洗う「朝シャン」は、1986年に売り出されたシャンプーのCMから生まれた言葉ですが、朝にシャンプーする習慣を作り出しました。(「朝シャン」は翌年、「新語・流行語大賞」の新語部門・表現賞を受賞するほどのブームとなりました。)

 

 こういった、「家族を解体して、消費者としての個人を立ち上げる試み」はさまざまな分野での「内需拡大」(=国内での消費を増やすこと)に貢献しました。しかし、そもそも80年代にそれまでの輸出中心の経済活動から内需主導型へのシフトが始まったのは、1985年のプラザ合意(G5《先進5ヶ国蔵相・中央銀行総裁会議》により発表された、ドル安を図る合意。とりわけアメリカの対日貿易赤字が顕著であったため実質的に円高ドル安に誘導する合意)で急速な円高が進行したことに依ります。

 

 プラザ合意で日本国内では「円高不況」が起きると懸念されたため、政府は低金利政策を継続的に採用しました。この低金利政策が、不動産や株式に対する投機を促進し、やがて未曾有の好景気となるバブル景気(1987年〜1991年)をもたらすこととなります。

 

 一方で、1970年代後半からアメリカで始まった「ネオリベラリズム(新自由主義)」(=自由競争を最上のものと考え、政府による介入は市場機能を歪めるので、極力限定すべきであるとする思想、及びそれに基づく政策)の波は、1980年代後半には日本にも押し寄せ、「内外価格差是正」「規制緩和」「構造改革」等をキャッチフレーズに、1995年には「規制緩和推進五カ年計画」が閣議決定されました。

 

 1996年「労働者派遣法の改正」によって、16の専門職種に限定されていた派遣の対象業種が26となり、1999年には一部を除いて原則自由化し、2004年には「改正労働者派遣法」によって、それまで除外されていた製造現場や社会福祉施設での派遣労働も認められました。2007年の法律改正により、派遣労働の期間が1年から3年まで延長となったのですが、製造業(派遣先)において同一部署で連続3年以上派遣契約を結べなくなる(つまり正規雇用に切り替えなければならない)、いわゆる「2009年問題」が取りざたされるようになりました。

 

 しかし、2008年の世界金融危機による不況に乗りかかり、派遣側がかなり強引に派遣労働者の契約解除、契約更新停止(いわゆる派遣切り)を行ったため、この問題は派遣労働者の大量解雇という最悪の形で終わりました。

 

 このようにして、「年功序列」「終身雇用」といった日本型雇用は崩れ、全労働者のうちの1/3が非正規雇用である状況(2008年に34.6%、2010年10月統計で過去最高の38.7%)となり、「格差社会」が社会問題化しています。

 

 前述の、少なくとも2008年まで続いた「一億総中流」意識はここに至って無くなり、久しく耳にしなかった「貧困」及び「貧困率上昇」の問題が浮上してきました。

 

 個別の現象に見えることが、実は多くが関連していることに気づくと、「社会システム」に問題があることに辿り着きます。私たちは、「自己責任」といった、個人にのみ問題解決の責を負わせる言葉に敏感になりながらも、一方で社会に属する一員としての責務を全うすることを考えていかなければならないと思いますが、いかがでしょう。(『「小論文」作成のためのQ&A』pp.43-44)

 

 

 

まあ、ね。高校生には難しかった、とは思うけど。

でも、入試小論文の作成を通じて、少しでも、世の中のことに目を向けてほしかった、私が、そこにいます。

 

高校生だから、と手抜きしない。

なぜなら、教育は「種まき」の仕事だから。高校生は、未来、だから。

いくつになっても、これからを生きる人たち(それは、年齢に関係しないと思います)に失礼なことはしない、姿勢を続けたい、と思います。

 

画像は、読書会の朝、アンジーとの散歩で撮った、ご近所の紅葉。

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