「てつがくのライオン」 工藤 直子
ライオンは「てつがく」が気に入っている。かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。
きょうライオンは「てつがくてき」になろうと思った。哲学というのは坐りかたから工夫した方がよいと思われるので、尾を右にまるめて腹ばいに坐り、前肢を重ねてそろえた。首をのばし、右斜め上をむいた。尾のまるめ工合からして、その方がよい。
尾が右で顔が左をむいたら、でれりとしてしまう。
ライオンが顔をむけた先に、草原が続き、木が一本はえていた。ライオンは、その木の梢をみつめた。梢の葉は風に吹かれてゆれた。ライオンのたてがみも、ときどきゆれた。
(だれか来てくれるといいな。「なにしてるの?」と聞いたら「哲学してるの」って答えるんだ)
ライオンは、横目で、だれか来るのを見はりながらじっとしていたが誰も来なかった。
日が暮れた。ライオンは肩がこってお腹がすいた。(てつがくは肩がこるな。お腹がすくと、てつがくはだめだな)
きょうは「てつがく」はおわりにして、かたつむりのところへ行こうと思った。
「やあ、かたつむり。ぼくはきょう、てつがくだった」
「やあ、ライオン。それはよかった。で、どんなだった?」
「うん。こんなだった。」
ライオンは、てつがくをやった時のようすをしてみせた。さっきと同じように首をのばして右斜め上をみると、そこには夕焼けの空があった。
「あゝ、なんていいのだろう。ライオン、あんたの哲学は、とても美しくてとても立派」
「そう? ……とても……何だって? もういちど云ってくれない?」
「うん。とても美しくて、とても立派」
「そう、ぼくのてつがくは、とても美しくてとても立派なの? ありがとうかたつむり」
ライオンは肩こりもお腹すきも忘れて、じっとてつがくになっていた。
(『てつがくのライオン』フォア文庫)
かたつむりに教えられて「てつがく」が気に入っている、というのも、どうか、というところですが、でもまあ、一生懸命「てつがくてき」になろうと努力するライオン。形から入ろうとするのは、「初心者」の基本。…でも、いつまでたっても「カッコ、カッコ、カッコばかり先走り…」(「ロックンロールウイドー」山口百恵)から抜け出せない輩も世の中にはいっぱいいるからね。
でもいいじゃない? このライオンは「肩こりもお腹すきも忘れて、じっとてつがくになっていた。」っていうんだから。そんな多大な犠牲のもとに「てつがく」を追求してるんだから。…と思わせるほど、素直な実践者であります。ただ…かたつむりが感動したのは「夕焼けの空」だったので、大いなる勘違いの元に、話は進んでいくのであります。
ライオンくん、君の「てつがく」はそれでいいかもしれないけど、「哲学」にするためには「思考」が大事だよ。それから「行動」。生き方における行動が必要。「哲学がある」というのは、「生き方の問題」なんだよ。カッコつけたがりの輩は「謝って済む」と思っているみたいだけど、…どこかの国の復興大臣みたいに。責任ある立場では、謝って済むことなんてないね。辞任要求される前に「自分はこの責務を全うする器ではありませんでした」と自己分析できないものかね。…できないんだろうね。
ああ、本当に。ちゃんとした政治家、政治屋でない政治家がいないものかと思います。きちんとものを考えられる人が、責務を果たす地位に就いていないのを見ると、日本の戦後教育は成功していない、と思います。ちゃんとした人が全くいないわけではないのだろうけれど、ちゃんと選んでいない、ということでしょうから。
これも、生きている限り、諦めるわけには生きませんね。今の自分にできることをしようと思います。
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