「きゅうり」 八木 幹夫
きゅうりのつるはどっちまきだか知っている?
知らない
左巻き それとも 右巻き?
どっちでもいいことばかりいってるのね あなたって
地球の引力や磁力と関係あるのだろうか?
みどりのかなしい夢からさめて
つかめるものは
藁(わら)をもつかみ
ぼくの引力圏の夢から消えて
こいびとよ
きみはどこへいったのか
空にむかう
支柱もなくて
日照りにやかれ
地を這(は)いまわる
きょうはじっくり
冷静に
きみのことを考えてみるよ
(詩集『野菜畑のソクラテス』1995年刊)
紹介した当時は、詩人について調べてなかったのですが、ちょっと気になって検索かけたら「95年、詩集『野菜畑のソクラテス』で現代詩花椿賞、芸術選奨文部大臣新人賞受賞」とありました。で、どうやら長年中学校の教員をされていたようなのです。1947年生まれで、「父の死後、10年間作品を発表せず」とありました。1983年に第一詩集を出されて、次は1995年の『野菜畑のソクラテス』なのですね。
きゅうりのつるの巻く方向にふと興味を抱いた詩人が、側にいる奥さんらしき人に聞いてみるのですが、素っ気ない返事しかもらえず、…そうすると、詩人の意識は、日常から離陸して、限りなくイマジネーションの世界へと飛ぶわけですね。
「みどりのかなしい夢からさめて/つかめるものは/藁をもつかみ」。「みどりのかなしい夢」って何だろう? …ともかくも、「ぼくの引力圏の夢から消えて」しまうのですね。「きゅうり」が想像の埒外に飛び出てしまって、追いつけないってこと? …これはもう、妄想、だね。だって、「きゅうり」が「こいびと」になっちゃってる…。
で、いったいどこまで行くの? と思っていると、「きょうはじっくり/冷静に/きみのことを考えてみるよ」と、着地する。なんだか滑稽。なんだか笑える。…いったい何が?
冷静になって「考え」たところで、つるの巻く方向は変わらないだろうし、「空にむかう/支柱もなくて/日照りにやかれ/地を這いまわる」のは、詩人の勝手な妄想だし、…となると、考えても考えなくてもいいようなことに、大真面目に「考えてみるよ」なんて、その辺りが、「可笑しい」のでしょうか。
私はこの詩をどこから探してきたのでしょう? もう記憶も定かでないのですが。八木幹夫の詩は他に読んでないので、今から詩集を探そうと思います。
それにしても、この詩のカットはピッタリですね。…当時カットを描いてくれた倉本清香さん、元気にしているでしょうか?
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