初日の続きをもう少し。
理論説明のあと、補足説明がありました。(「質問は?」と言われたのですが、しばらく誰も質問しなかったので、マイク自身が言葉を紡ぎました。)
「私が5歳のとき。世界の中で、こんな風にしたらうまくいく、というやり方を身につけた。大人になって5歳のときと同じやり方でやったらうまくいかなかっただろう。でも一部の人は一旦身につけたやり方にこだわる。新しいやり方がわからなくて、しばらく同じ癖、習慣でやるが、同じようにはうまくいかない」
「人それぞれである、そのプロセスに、私たちがどう向き合うか、なのです。それが異なるのをみるとワクワクします」
(マイクがひとりひとりに「何に興味があるか」を尋ねたときに、「自分が感じる怖さ」について話し始めて、泣いた人に向かって)
「私はあなたに付き添うつもりがありますから。あなたが、その怖さに向き合おうとするとき」
「私は勝手に、あなたの涙は悲しみばかりだと決めつけるつもりはありません。喜びの涙かもしれないから。それとも、誰か自分の怖さに付き添ってくれる人がいるという安心かもしれません。わかりません。」
ここで、ワークの前の「チェックイン」について、質問がありました。「チェックインは必ずするのか?」
「状況による。札幌(でのワークショップ)では、人が多すぎてやらなかった。(※30名を超えていたそう)ここだとできるし、私は皆さんが何に興味を持っているかを知りたかったので、そうした。それがチェックインと呼ばれるものなら、そう」
「でも、わざわざ『チェックイン』と呼ばなくてもいい。『チェックインしましょう』というと初めての人は途惑う。それよりは『あなたの興味のあることは?』といった方が抵抗感が少ない」
続いて「チェックインには形があるのか?」という質問に対して。
「だから、状況によると言えるんですね。礼儀がどうとか、下手すると形式張ってしまうという害が出てくる。形式ばらないのがポイント」
「そして、フィールドの形は、(私と皆さんが)だいたい同じキョリであること。平等に、ということです」
「理論をどのように実践に当て込んで展開できるか? 歴史・過去からではなく、『今、ここ』で、浮上するものに注意しましょう」と言われて、ワークが始まりました。
守秘義務があるので詳細は提示できませんが、マイクの言ったことで、心に残ったことだけ書き留めます。
「このキョリでいい?」
「それは存じ上げませんでした。近くなると何が怖いのでしょう?」
「わかります。…ただ、このキョリの問題は、あなたにとって何なのだろうと思ったのです」
「そういう風におっしゃると、人生を描写しているみたい。やりたいのに言えなくて運命に任せた。運命がジャンケンに勝たせてくれたら、それはそれでよい、と。」
「あなたにとって馴染みのある感じ? よくある感じ?」
「あなたの人生と、何かよく似てない?」
「あなたは負けることに慣れてきた。そのことに分かる、と言っているんです。私が悲しくなるのは、あなたは明確に説明しているのに、それを自分でわかっていないということ。」
(マイクは自分に自信がありますか? という、ワークを受けている人からの問いかけに対して)
「自信をつける練習をしていますよ。過去においては、あなたは自分で自信をつけるサポートを得られていなかった。私はあなたをサポートすることで、私の自信を掻き集めているんです。」
「じゃあ、終わらせましょうか? 自分の課題がわかりましたか? 自分の言いたいことを言う練習。ちょうど私とやったように、自分がちゃんと言った時に『あ、今、ちゃんと言ったな』と認識することが大事です」
「立ち上がって握手はどうですか? (それとも)やらなくてもいいんですよ」
「あなたの選択。自分にとってしっくりくる選択をしてください。」
「別に許可は入りませんよ。時間をかけてください。ここにいますからね。」
「あなたは自分で選択しましたね。だから、ちゃんとそのことにも気づいてください。」
ここでワークは終了し、質問受け付けです。
1 「マイクはAさんをどのように見ていましたか?」
Aが自分を見る目とは違った目で見ていた。Aは自分をあまり表に出さない。でも今回はちょっと見せることができた。だから「客観的」ではなく、「違う視点で見ていた」ということです。
2 「マイクはワーク中に自分の感情を表現されましたが、それは?」
「悲しかった」というのは自分の自然な感情として出てきた。(「悲しい」と感じても、自分は表現できない、という質問者に対して)そういう風に考えているうちは、思考にあって、感情とつながっていない。次は「体験する」(ことが必要)ですね。
「関係性」からいうと、ある人が表現して(それは、思考からかもしれないが)、セラピストにはそれはない。それは「関係性」と言わない。私にとって大事なのは、そこに関わること。「私にはこういうことが起きています」と伝えること。それが生き生きと関係を築くこと。
Aさんのワークは午後から始まり、次に私のワークとなり、それで初日は終わりました。…こうやってマイクの言葉を拾い上げるだけでも、なんだか暖かいものを感じます。とても丁寧に人を見ていることがうかがえます。そして、とても丁寧に、人に対していらっしゃる。穏やかに。その出発点は「自分に対して正直である」ところから生まれているように思いました。…今、吉野弘の詩「奈々子に」の一節「自分があって、世界がある」がふと浮かびました。
画像は、杏樹(アンジー)との朝の散歩で見つけた、ご近所の庭先のスミレ。…微細な中に真実は宿っているのですね。