あかね書房から出されています。
「クラブから流れるジャズにあわせ、心のおもむくまま、かたちのないトランペットを吹き鳴らすベン。
そんなベンに、ある日、憧れのトランペッターが手渡してくれたのは…。
貧しい黒人少年と、トランペッターのふれあいを描きあげた1979年コルデコット賞次席作。」と、カバー裏に紹介があります。
全編、モノトーンで描かれています。
興味深かったのは、ピアニスト、サキソフォニスト、トロンボニスト、ドラマー、トランペッターの演奏場面。
それぞれ個別で描かれているのですが、まるで音が飛び出すような描写なのです。
構成、線、白と黒の対比、バックの描き方が、どれもその楽器独特の雰囲気を醸し出しています。


さて。予想がつくように、ベンは憧れのトランペッターから「クラブへこいよ。」と声をかけてもらい、「いっしょにやってみようじゃねえか」と言われます。
そして、トランペットを吹かせてもらっているベンの姿で、お話は終わります。
なんだか、いいなあと思うのです。こんな風に子どもが大人に憧れて。
そして、大人はそんな子どもを邪険に扱うのではなく、小さな「友人」として接する、というのが。
子どもはいつまでも子どもではなく、いずれ大人になる存在です。
子どもだからできないでいること、まだ未発達の部分を「劣っている」と見るのでなく、共に生きる存在として尊重する姿が、ほのぼのと「いい感じ」なのだと思います。
作者紹介に「子ども時代からバレエを学び、プロのバレリーナとなったが、足のけがのため引退。処女作『マックス』発表後、作家業に専念。音楽、特にジャズを愛するところから、この本が生まれた。」
とあります。