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  4. 大事なのは、自分は何者なのかではなく、何者でないか〜長田弘の詩「贈りもの」(『深呼吸の必要』所収「大きな木」から)〜
 

大事なのは、自分は何者なのかではなく、何者でないか〜長田弘の詩「贈りもの」(『深呼吸の必要』所収「大きな木」から)〜

2020/10/20
大事なのは、自分は何者なのかではなく、何者でないか〜長田弘の詩「贈りもの」(『深呼吸の必要』所収「大きな木」から)〜

朝の、まだ始発の電車が走らない時間。

私は、長田弘の詩集『深呼吸の必要』を開く。

今日の詩は? ああ!これだ。

 

   贈りもの        長田弘

 

 幼い誕生日の贈りものに、木をもらった。

一本の夏蜜柑の木。木は年々たくさんの実を

つけた。種子がおおく、ふくろはちいさかっ

たが、噛むと歯にさくさくと、さわやかな酸

っぱい味がした。立派な木ではなかったが、

それが自分の木だとおもうと、ふしぎな充実

をおぼえた。葉をしげらせた夏蜜柑の木をみ

ると、こころがかえってきた。

 その夏蜜柑の木は、もう記憶の景色のなか

にしかのこっていない。あのころは魂という

のはどこにあって、どんな色をしているのだ

ろうとおもっていた。いまは、山も川原もな

い街に暮らし、矩形の部屋に住む。魂のこと

はかんがえなくなった。何が正しいかをかん

がえず、ただ間違いをおかすとしたら、自分

の間違いであってほしいとおもっている。部

屋には鉢植えの一本のちいさな蜜柑の木があ

る。それは、誕生日に年齢を算えなくなって

から、きみがはじめて自分で、自分に贈った

贈りものだ。

 ときどきアントン・バーウォグイチの短い

話を読む。人生はいったい苦悩に値するもの

なのだろうかと言ったチェーホフ。大事なの

は、自分が何者なのかではなく、何者でないか

だ。急がないこと。手をつかって仕事するこ

と。そして、日々のたのしみを、一本の自分

の木と共にすること。


「最初の質問」に「木を友人だと思ったことがありますか」というのがあったように思うけど。

そうか。長田弘には、一本の蜜柑の木があったんだ!

 

…そうね。広島に行ってすぐの5月。

広島市中区の公園で開かれていた植木市で、自分の背丈と同じぐらいのベンジャミンを買い求め。

広島にいた25年、一緒にいた。

「ベンちゃん」と呼んでいた。

 

太い一本の木の幹に枝を広げ、わさわさと葉を茂らせた。

よくあるような、細い幹を3本ほど絡ませて太い幹にしたもの、ではなかった。

クリスマスには、この木にライトを巻いて飾り付けをした。

「ベンちゃん」で作文を書いて、子どもが「みどりの日作文コンクール」で賞をもらったりした。

 

夏場はベランダに出して、陽に当てる。

冬場は、家の中に入れて寒さを凌ぐ。

 

広島から奈良に帰るときの「荷物」にも積み込んで、連れて帰った、というに。

なんと! 奈良で枯らしてしまった。

 

なんか、呆然として涙も出なかった…気がする。

 

言葉を使って話はしない、けど、木と一緒にいると、確かに「魂のありか」を考える。

私より長く生きるだろう木が、何を思っているか、など、とりとめのないことを想ったり、する。

 

矩形の部屋! 「くけい」って読めなかった。「さしがた」ともいうらしい。長方形のこと。

 

「ただ間違いをおかすとしたら、自分の間違いであってほしいとおもっている。」って何だろう?

自分の間違い、以外に何がある? …自分に関わる範囲で済むように、ってことかしら?

 

それから…「誕生日に年齢を算えなくなってから」って幾つぐらいから、だろう?

…私もすでにもう、自分の年齢を考えてない、気はするけれど。



極めつけが、「大事なのは、自分が何者なのかではなく、何者でないかだ。」という言葉。

読んだとき、一瞬、え? と思った。

…そうね。大人になっていく過程で、一生懸命「何者かになろうと」してきた、気がする。

そして、わかってきたのは、「私はこれではない」「あれでもない」という、「これは違う」が見えてきた、ということ。

 

積極的に「自分は何者である」と規定しなくてもいい、のかもしれない。

焦って、自己規定しなくていい。

長田弘は言う。「急がないこと。手をつかって仕事すること。そして、日々のたのしみを、一本の自分の木と共にすること。」

 

なにか…この最後の方の言葉を味わえるのは、私が人生の「折り返し」を過ぎて、残りを意識するようになった、からかもしれない。

 

画像は、この前、ふらりと生駒山中腹にある「鬼の茶屋」に向かう途中で撮った秋桜。

一本ですっくと立っている姿もいいけれど、こんなふうに群生しているのもいいように思いました。

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