5月1日。広島に用事があって。
それを済ませて古い友人とJR五日市駅で待ち合わせ。
ふと、広銀(広島銀行)の案内板に「ひろしま美術館」の案内が目に入り。
それは、「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念のアーノルド・ローベル展の紹介だった。
友人が同意してくれたので、広電に乗って、紙屋町まで。
少しだけ歩いたら、ひろしま美術館。
ああ、よく来たね、ここ。
新緑がとても綺麗だった。
「原画やスケッチ200点による日本初の展覧会」と銘打っていて。
ゆっくりと楽しんだ。
ショップでローベルのいろんな絵本が並んでいて。
「がまくんとかえるくん」シリーズはみんな持っているので、『ぼくのおじさん』を手に取った。
1981年の作品。日本での翻訳は1982年。
以来2020年9月1日まで第29刷の発行となっている。
ぼくは ぞうの こども。
あるひ かあさんと とうさんが
ふねに のって たびにでた。
でも ぼく いっしょに いけなかった。
かぜひいて はなみずが でて
のどが いたかったからね。
で うちへ かえって ねていた。
そんな風にお話は始まる。
「かあさんと とうさん」!
ああ、そうだね。子どもにとっては「かあさん」が先。
嵐になって、船は戻って来なくて、ひとりぼっちになって。
カーテンしめて、部屋に座り込んでいたぼくの前に
ドアを開けて「おじさん」がやってくる。
「やあ こんにちは。
わしは きみの おじさんだよ」
で、おじさんと一緒におじさんの家に向かう。
車窓から見える家を数え、畑を数え、電柱を数え…
そして、食べたピーナツの殻を数え、ているうちに
ぼくを安心させていく。
それから始まった、おじさんとの生活。
ランプをつけて、ランプに「願いごと」をし、
「夜明け」への挨拶をし、お話を聞かせてもらい…。
親が恋しくなって少し悲しくなった時には、
おじさんは持っている衣装を全部着てくれて、大笑いして。
それから。
ぼくの歌まで作ってくれて。
ぼくのうた
ぞうのうた
うたいたくなりゃ どんな ときでも
うたうよ
はなを まるめて
きの えだや
つるに ひっかけて
ぶらーんと むこうへ
とんでいくときも
うたうよ
ふふふ。
鼻を丸めて木の枝に引っ掛けて、ぶらーんと向こうに飛んでいく時の絵がユーモラス。
おじさんは、ぼくと一緒に何でもやってくれるんだ。
でも、そのうち。
おじさんに送られて、母さんと父さんが待つ家に帰ってくる。
ねむる まえに
おじさんが ぼくの へやへ やってきた。
「きしゃの なかで わしが
なにを かぞえていたか しりたいかい?」
といった。
「うん」と ぼくは いった。
「わしは ひにちを かぞえていたんだ」
とおじさんは いった。
「ぼくたちが いっしょに すごした
ひにちの かず?」と ぼくは たずねた。
「すばらしい まいにちだった。
なんて はやく すぎてしまったものだ」
ぼくたちは ときどき あおう
と やくそくした。
おじさんは ぼくに おやすみなさいのキスをした。
そして ドアをしめて いってしまった。
なんというか…ほわっと温かい気持ちになるのは、
おじさんが、ぼくという甥っ子を、とても大事に、
…そう、、まるで大切な友人のように扱って、
二人の時間を楽しんでくれたからだと思う。
子どもだから、と見くびるのでも見下すのでもなく、
その時しか訪れない、大切な時間を過ごしてくれたからだと思う。
親でもなく、でも全くの他人でもない、
そんな不思議な繋がりを、血縁によらずとも創っていけたら…
と願う。