「競走」 松下 育男
そんなに速く走ると
今に君自身をさえ
追いぬいてしまう
みたことじゃない
君が広いグラウンドを
君自身をさがして今度は
走りだす
それにしてもこの青い
空は
どうしていつもひきつづいての
空なんだろう
いつまでも死ぬことのない空の下で
君はうまく君を見つけだし
入りこめたか
はげしい息づかいの中でも
ぼくはつねに
考えている
この世界がなかった場合の
ぼくのことを
するとこの世界が
なかった場合の
ぼくが
考えから
はずみをつけて
走りだす
悲しく脇腹をすって
ぼくをぬいて行く
遠いコースのむこうにも
空
出典も何もわからないのですが、第1連の「そんなに速く走ると/今に君自身をさえ/追いぬいてしまう/みたことじゃない」が妙に印象に残った記憶があります。
昔、「時間」についての問題を扱った、高校「現代国語」の評論教材があって、…確か、先進国の人間が発展途上国の人間を仕事で雇って、先を急がせて旅をしたけれど、あるとき、雇った人たちが一斉に車座になって座り込み、何日か動かなくなって、そのうちまた一斉に動き出して、どうしたことかと思ったら「急ぎすぎて、魂が身体について来られなかったから、魂が追いつくのを待っていた」と返答された、という話も記憶にあります。教員になったばかりの、1980年代後半から1990年代前半の教科書教材だった気がします。タイトルも筆者も定かでないのですが。(筆者は見田宗介だったかなぁ)
学校や会社という組織に属していると、自分で時間を区切るというよりも、区切られた時間に自分を合わせることを求められ、それが「あたりまえ」になってしまって何が自分のペースなのか、なかなかつかめないでいる人が多い気がします。求められるとつい無理をしてしまって、それが続くと「過労」になるのですね。
組織に属さなくなると、もっと自分で自由に時間を使えるようになると思っていましたけれど、私の場合、かえってずるずると「あれもしなきゃ…、これもしなきゃ…」になってしまう自分に、昨年末気づきました。
自分の心と体がうまく一致して、「今、ここ」に存在して充足している、という状態を常に作ることは難しいですが、時々、自分の「魂」が一緒についてきているか確認することが必要であるように思います。いえ、難しいことではありません。今やっていることが楽しくなかったり、不安や焦りがあったり、ということがひとつの目安になるようです。
うまく一致していなかったら、休みを取るしかありませんね。…そう、魂が身体に追いつくのを待って座り込む、つまり何もしないで休息を取るのですね。年末に不調に陥った私にゲシュタルト仲間のともこさんが、「休むっていうのは、体から一本抜くんだよ。漢字もそうなってる。今やってることを何か減らさなきゃ」という内容の誰かのブログを紹介してくれました。言い得て妙だと思いました。
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