「風」 高橋順子
青い平野の中を通っていったら
田圃に降りていた白い鳥が揃って西方を見ていた
電車で通ったので
鳥の見ているものを振り向いて見ることが出来なかったが
多分西風が吹いていたのだろう
振り向くといま見ている世界の延長でなくなる
そんな気持がして別れたあと振り向けないことがある
鳥のように風を見ている人の目に
出会いはしまいかと
(詩集『花まいらせず』青肆山田 1986年刊)
皆が見ているものを、自分だけが知らない、という違和感。
自分もこの世界に属している、とあたりまえのように思っていたのに、自分抜きでこの世界は成り立っているのかもしれない、と思った時の凄まじい孤独。
まだ、ね、鳥と人とは違うから…という理由づけができるうちはいいけれど、もしかしたら、私だけがこの世界からはみ出しているのかもしれない…と、気づくのが怖くて、振り向けない。
…でも、薄々気づいているのでしょう?
「振り向くといま見ている世界の延長でなくなる/そんな気持がして」ってことは、「いま見ている世界」が確かなものではないと。
私の居場所は…どこ?
ずっとずっと、そう思ってきた。
ずっとずっと、探してきた。
「私の帰る場所(ところ)は?」と。
探して、探して、探し疲れて、探すのをやめた。
この世界に違和感を抱いて生きてきたけれど、ある時、思った。
「私が私の帰る場所」。
そう、私は私の帰る場所を、自分で作ることができる!
帰る場所がないなら、自分で作ればいいんだ!
それからは、「私の帰る場所」を意識しなくなった。
でも、時折、こんな風な詩を見ると、探して探して、探し疲れた頃の切ない気持ちを思い出す。
でも…、大丈夫よ。大丈夫。
私がしっかと大地を踏みしめて立っていられたら、そこが全ての始まり。
探さなくても、確実に私の立っている場所は、ある。
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