これは、がまくんとかえるくんシリーズ1冊目『ふたりはともだち」の中に収められている作品。
アーノルド・ローベルの1970年の作で、文化出版局から1972年第1刷が出されています。
私の持っているものは2001年の第1刷です130刷。…凄いですねえ。
確か…子どもが小学校に入って、国語の教科書に「手紙」という作品が採択されていて、「国語の本読み」の宿題で、知ったのだと思います。
今回は、「手紙」が収められている『ふたりはともだち』から、別の作品を。

“がまくんと かえるくんは
とおくへ でかけました。
ふたりは 大きなくさはらを よこぎりました。
森の中をあるきました。
川のそばをあるきました。
さいごに ふたりは がまくんの いえへ
かえりつきました。
「ああ いやに なっちゃう。」
がまくんが いいました。
「ぼく 足にけがをしただけじゃ ないんだ。
うわぎのボタンを 一つなくしちゃった。」”
あらあら。ボタンが一つなくなると、ちょっと間抜けた感じになっちゃって、イヤですね。
でも、かえるくんがこう言ってくれます。
“「しんぱい ごむよう。」
かえるくんが いいました。
「ぼくたちの とおってきた ところを
のこらず もどって あるいてみよう。
じきに みつかるよ。」
ふたりは 大きな くさはらへ もどりました。
ふたりは せのたかい くさの あいだを
ボタンが ないか さがし はじめました。”
で、かえるくんが「きみのボタンだ!」と言って見つけてくれた黒いボタンも小さいボタンも薄いボタンも、すずめが見つけてくれた二つ穴のボタンも、あらいぐまが見つけてくれた四角いボタンも、みんなみんな違っていて。
がまくんは怒ります。
“「どこもかしこも ボタンだらけなのに、ぼくのボタンは ないんだよ!」
がまくんは はしって、いえへ かえり、
ドアを ぴしゃりと しめました。”
でもね。どうしたことでしょう…!
“すると ゆかの上に、白くって、穴が四つあいていて、大きくって、まるくって、厚いボタンがおちています。
「おやまあ」がまくんが いいました。
「ボタンは ずっと ここに あったんだ。
ぼく なんて かえるくんに めんどうを かけて しまったんだろう。」”
まあ、「青い鳥」ではないですが、幸せは遠いところにあるのではなく身近なところにあったのですね。
でも、お話はここで終わらないのです。
かえるくんに悪いなあと思ったがまくんはどうしたか。
僕のじゃない!と言いつつ、ポケットに入れてきた「異なる」ボタンを取り出し、
それらをみんな上着に縫い付けて、次の日にかえるくんにあげるのです。
“かえるくんは とても きれいな うわぎだとおもいました。
かえるくんは うわぎをきて、うれしくて、ぴょんぴょん はねました。”
がまくん、
「僕のじゃない!」と言いつつ、かえるくんたちが見つけてくれたボタンをポケットに入れておくなんて。
お目当てのものではなくても、「とりあえず」拾っておいたんだね。
でも、そのおかげで「新しい」上着が出来上がったんだ!
欲しいもの、探しているものがすぐさま手に入らない時、それでも、自分のところにやってきたものを拒まずに受け取っていると、思ってもみない何か新しいものを生み出すことができるのかもしれない。
そんなことを、ふと思ったことでした。