「郷愁」 三好達治
蝶のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る……。私は壁に海を聴く……。私は本を閉ぢる。私は壁に凭(もた)れる。隣りの部屋で二時が打つ。「海、遠い海よ!と私は紙にしたためる。——海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西(ふらんす)人の言葉では、あなたの中に海がある。」
※フランス語では、母をmere〔mε:r〕、海を mer 〔mε:r〕と表記する
(詩集『測量船』1930年刊)
ふふふ…どうですか?
…確かに、「海」という漢字の中には「母」がいますね。
そして、フランス語の母「mere」の中に海「mer」がありますね。
これを発見した時、三好達治は嬉しかったでしょうね。…ということを感じさせる詩です。
遥か昔、…高校生の頃、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で浮かぶ「羊水」の濃度は、海水の濃度と同じなのだと聞いたことがあります。
だから、私たちは海から進化して来たのだとわかるのだ、と。
ちょっと感動しましたね。そうなのか、と。私たちは海からやって来たのか、と。
「蝶のような私の郷愁」ーーふるさとを恋しく思う気持ちが蝶のように軽やかに時空を超え、故郷の海の波の音を、潮の香りを、海風を、「私」の耳に届けるのですね。
イマジネーションは一瞬のうちに、「私」を故郷へと連れて行く。
「午後の街角」に居ながら、眼前に広がるのは、故郷の海。
だけど、「隣の部屋で二時が打つ」のも意識に入ってくる…。
「白昼夢」的な既視感(デジャ・ヴ)ですね。
それにしても…海と母のつながりは、何も漢字文化だけではないのですね。
ラテン系のフランス語にも、あるのですねえ。
…英語はseaとmotherで、ちょっとつながりは感じませんが。
この詩をフランス人のミリアムはどう見るかしら?
近頃漢字の習得も、並々ならない彼女に、紹介してみようと思います。
母も海も…、疲れたときには、側で眠りたいようなイメージを抱かせます。
守られている感覚が欲しいのかもしれません。
特に、心の調子がよくなくて、周囲に十分な注意を向けられないときには。
ちょっとした怪我も多くなりますし、ね。注意力散漫になってしまって。
心に疲れを感じたときは、波の音を聞いて休むのも効果的です。画像は、矢田寺の紫陽花。薄曇の中、裏側から撮ってみました。
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