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現代文の授業開きの絵本でした〜佐野洋子作『100万回生きたねこ』〜

2017/04/20
現代文の授業開きの絵本でした〜佐野洋子作『100万回生きたねこ』〜
この絵本との付き合いは長いです。
31年の教員生活のうち、27年ぐらいはこの絵本を使って、「現代文」の授業の最初の時間(「授業開き」と言います)に読み聞かせをしていました。
え? 高校生に絵本の読み聞かせ? と思われたでしょう? 
そうなんです。女の子は喜ぶんですが、男の子の中には、バカにしたような態度を取る生徒もいました。
でも、そういうのもお構いなく拍手を貰って(というか要求して)、読み始めます。

 「100万回も しなない ねこが いました。

100万回も しんで、100万回も 生きたのです。

りっぱな とらねこでした。

100万人の 人が、そのねこを かわいがり、100万人の 人が、そのねこが しんだとき なきました。

ねこは、 1回も なきませんでした。」

 

 

というところから、お話は始まります。

ねこは、いろんな飼い主の猫になります。

王様だったり、船乗りだったり、泥棒だったり、おばあさんだったり…。

事故にあったり天寿を全うしたりして死にますが、どの飼い主も泣いてくれたのです。

この辺りの、バラエティーゆたかな「人生」ならぬ「猫生」の展開は、いわば、絵本表現の常套手段である「繰り返し」です。

 

 

そろそろ飽きたな…、と思われる頃、「あるとき、ねこは だれの ねこでも ありませんでした。のらねこだったのです。」と展開します。

「ねこは はじめて 自分の ねこに なりました。 ねこは自分が だいすきでした。」と続いて、なんだろなんだろ? と興味を引きます。

 

 

いろんなメス猫が近づいてくるのですが、モテモテのねこは退屈です。

たった1匹、ねこに見向きもしない、白い美しいねこが登場します。

「俺は、100万回死んだんだぜ!」などと自慢するねこに全く関心を持たない白いねこに、ねこは自慢するのをやめて「そばに いても いいかい。」と尋ねます。

「ええ。」と答えた白いねこと一緒にいるようになり、やがて たくさんの子ねこが生まれます。

 

 

子ねこが巣立ち、やがて白いねこも歳を取り…白いねこが死んだ後、ねこは泣いて泣いて…そして動かなくなります。

絵本の最後は、「ねこは もう、けっして 生きかえりませんでした。」で終わります。

 

 

読み聞かせの後、「さて、ねこはなぜ、生き返らなかったのでしょう?」という「お題」を与えます。

いろんなアンケート項目があるワークシートの最初の項目に、この絵本の感想を書いてもらいます。

 

 

その後の作業が大変なのですが、ワークシートを一枚一枚縮小コピーして、生徒40名の感想をB4サイズ1枚に収まるようにして切り貼りします。

そういった「感想一覧」をクラスごとに作ります。

そして、もちろん書いた本人の名前入りです。

 

 

40名の記名入り感想一覧は、壮観です。

とてもインパクトがあります。

「お!」と声が上がることもあります。

 

 

「記名入り」に抵抗を示す生徒が必ず何人かいます。

私は「自分の感想に自信を持ちなさい」と諭します。

どんな感想でも今の自分の立ち位置を示すものなんだから、誰が何と言おうと、堂々としていなさい、と言います。

同時に、「この意見、とってもいいよね、自分にはない考えだったね、と思うものには、アンダーラインを入れておくように。」と言います。

自分の感想・意見を尊重させながら、同時に人の意見を認めたり取り入れたりすることの豊かさを教えます。

 

 

「ねこはなぜ、生き返らなかったのか?」という問いは、物語の「同化」の方向です。

ストーリー展開に乗っかって、自分の気持ちを登場人物にかぶせていく方向です。

 

 

もう一つの「異化」の方向も教えます。

物語を外から見る見方です。

一つは「表現」。

「ねこが自慢したセリフはなんだっけ?」と発問しますが、大抵は答えられません。

「俺は100万回も死んだんだぜ!」なんですね。

『100万回生きたねこ』という題名の絵本なのに、です。

つまりは、100万回生きても誰かの猫だったので、「生きた」とは言えないのですね。

…となると、野良猫になった時の「ねこははじめて自分のねこになりました」という表現がとても効いてくるのです。

 

 

そして、そのことが、ストーリー展開にどう活かされるかを確認します。

「自分のねこ」になって初めて「出会い」が生まれるのですね。

「あなた方も、自分が自分のものでない状態だったら、出会いは生まれないのよ」なあんて、ちょっと「脅し」も入れます。

 

 

ねこは白いねこにも自慢で対しようとしますが、白いねこは反応しません。

そこで初めて、虚勢を張らずに「側にいていいかい?」という本心が発せられ、人生、いや猫生を共にする伴侶となるのです。

何も虚勢を張って、自分を飾らずともいいわけですね。

 

 

「異化」のもう一つは、作品の構成です。

最初は繰り返しパターンで、つぎに「転機」を作り、クライマックスへと突入する、という一連の流れです。

それぞれの「狙い」を考えさせ、作品構成が成功しているかどうかの「評価」をさせます。

 

 

…という授業を2時間で組み、「現代文」の授業で何を学ぶかを併せて説明します。

「同化」と「異化」、自分の意見を持つこと、意見交換することの豊かさを確認し、「参加型授業」を展開することを示します。

この最初の2時間で1年間の方向性を示すわけですから、気合が入ります。

「参加型」に抵抗を感じる生徒に「面白さ」を伝えないといけないわけですから、気合が入るのも当然ですね。

 


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