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「ふたりの間の真実」〜池下和彦の詩「川」〜

2017/08/31
「ふたりの間の真実」〜池下和彦の詩「川」〜

知人から渡されて、今手元に1冊の詩集があります。

童話屋から2006年に出版されている『母の詩集』。2012年に第2刷の発行です。

池下和彦という方の、「認知症の母を詠った詩集」と本の帯にあります。

「アルツハイマー型老年痴呆」と診断されたところから、最初の詩は始まります。



      「約束違反」 池下和彦

                平成三年秋、母はアルツハイマー老年痴呆と診断された

 

  その医者は

  母を

  アルツハイマー型老年痴呆だという

  今の医学ではなおらない病気だという

  なおらないから老年痴呆なのだと駄目を押す

  つける薬もないという

  のんでも気やすめなのだと駄目を押す

  そんなに駄目を押すこともないだろうに

  脳が縮んで

  しまいには消えてしまうのだという

  からだが残って

  脳が先に消えてしまうだなんて

  そんなの約束違反じゃないか

「約束違反」か…と思いました。…そうね、身体は元気で、脳に問題がある、と言われても、という家族としての戸惑いがにじみ出ています。

誰に言うでもなく…、そう、神さまに文句言いたいような、戸惑いを。

…それにしても「診断」を下す医者の言葉は、「審判」を下すようです。

 

それでも、日々、変化していく母を見る目は優しい。



「川」 池下和彦

 

川を見て

母は

という

ぼくが少しとがめた口調で

とききかえすと

母は

海から流れる川といいなおした

あまりに静かなものいいだったので

それを

ふたりのあいだの真実にする

 

「いいなおす」「ものいい」「ふたりのあいだ」とひらがなが心に優しい。

それは違うよ、と咎めだてしたところで、それが何になろう。

 

平成三年に「アルツハイマー型老年痴呆」と診断されて、平成九年に81歳で亡くなった、とあるから、75歳から認知症を患っておられたことになります。

ふいにここで、私は自分が恥ずかしくなります。

昨年春に小脳梗塞を起こしてから、時折、少し母の思考の速度がゆっくりだと感じることがあって、…そうなのに、あまりそのことについて考えてこなかったことに。

 

「診断」はある程度、症状が出てから出されるものでしょうから、その前段階はもう少し前から、かもしれない。

私は、こんな風に、母の歩みに合わせて歩けるだろうか? と自問自答する。

真実は、「ふたりのあいだの真実」に変わっていっても何も問題はない。

…ただ、それを背負う私に心の力量がいるだけで。

 

母の入院中、ひとりになって、いろいろ考えてしまいます。


画像は、奈良・東向き商店街の一角にあった鉢植え。

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